サリンジャーは生前、自分の小説の映画を許可しなかった。『フィールド・オブ・ドリームス』映画化の時も、原作どおりサリンジャーを登場させることはできなかった。

 でも、今はどうなんだろう? 遺書には「映像化を永遠に禁じる」とか書いてあるのかな?

 3月21日にアメリカで放送されたTVアニメ『サウスパーク』はサリンジャーがテーマだった。

 「今日はみんなにこの本を読んでもらいます」

 サウスパーク小学校のギャリソン先生は段ボール箱いっぱいの『ライ麦畑でつかまえて』を持って4年生の教室に現れた。

 「読書かよー。オレ、大っ嫌い」

 勉強嫌いのカートマンが文句を言うが、先生は続ける。

 「これは今まで教育委員会に禁じられていた本です。言葉が強烈です。今でも図書館によっては置いていません」

 「先生、これって、読んだ奴が人を殺したって本ですか?」 主人公のスタンが尋ねる。

 「たしかにジョン・レノンを殺した犯人はこの本に影響されたと言いましたが、あいつはただのバカです!」

 「すっげー! ヤバイじゃん! め、めっちゃ読みてー!」

 カートマンはじめ、子どもたちはワクワクで読み始めた。

 「......うーん。これのどこがヤバいの?」

 スタンとカイルはしばらく読んで首をヒネる。そこにカートマンとケニーが飛び込んできた。

 「全部読んだけど、チラっと汚ない言葉が出てくるだけ。それだけ! 時間のムダだった!」

 「じゃあ、本当にヤバい話をぼくらで書いてみようぜ!」

 仲良し4人組は一緒に毎日少しずつ小説を書き始めた。

 ある日、スタンのママが洗濯物を洋服ダンスにしまおうとして、引き出しの奥に紙の束を見つけた。表紙には「スクロッティ・マクブガーボールズの物語」とあった。日本語にすると「キンタマ袋・鼻クソ玉の物語」となる。ママは読み始めた。

 「暖かな夏の朝、マクブガーボールは目覚めると彼の......オエッ、彼がつかんだのは犬の......うっ、げ、げろげろげろげろげろげろげろー!」

 あまりのエゲツない描写を読んだママはゲロを部屋中にまき散らした。

 「あなた! あなた! 大変よ!」

 ゲロまみれのママはパパを呼んだ。

 「これ、子どもたちが書いたんだけど、読んでみて!」

 「なぜ?」

 「この小説、......傑作よ!」

 

 「え?」

 「こんなおぞましいものは生まれて初めて読んだけど、プロットは秀逸だし、キャラクターも生き生きしてるのよ!」

 どれどれ、とパパが読んでみると、やっぱりげろげろげろー。

 「オエーッ、でも感動した!」

 街の大人たちはその小説を回し読みし、みんなゲロ吐きながら大感動。スタンたちを呼びつける。

 

 「この小説を書いたのはあなたたちね?」

 叱られると思ったスタンたちは「バターズが夢遊病状態で書いたんだよ!」とイジメられっ子のせいにする。

 「バターズ、君は天才だ! あまりに素晴らしい本なので、出版が決まったよ!」

 『スクロッティ・マクブガーボールの物語』は国際的なベストセラーになり、全世界がゲロの海に沈んだ。

 バターズが大スターになって威張りだしたので頭にきたスタンたちは教育委員会に訴え出る。

 「こんな本、禁止すべきです。ただの下品なゴミ小説で、何の意味もありません」 書いた本人が言ってるのに、大人たちは「君たちにはわからないんだ。行間に隠された意味が」と聞く耳もたない。『ライ麦畑』と逆さまの状況!

 「こうなったら『ライ麦畑』みたいに、『スクロッティ・マクブガーボール』に影響された殺人事件が起こればいいんだ!」

 スタンたち4人は『スクロッティ~』の文中465回も「ブサイク」と罵倒されるサラ・ジェシカ・パーカーを森の中に放置する。彼女の馬面をハンターが鹿と間違って撃つように......。

 しかし、これほどリアルな嘔吐シーンが連続するアニメも前代未聞だ。さすが『サウスパーク』。この前の週のエピソードのネタはタイガー・ウッズ謝罪。この次の週はケンタッキー・フライド・チキンの店が医療用マリファナ販売所になる話だった。