ゼネラル・モーターズ(GM)がポンティアックとサターンの投げ売りバーゲンをすると発表した。どちらも2009年に生産を終えたブランドだ。

 09年5月にデトロイトに行った時、ポンティアック市を訪ねた。この街出身の有名人にはマドンナがいる。彼女の父親はポンティアックのエンジニアだった。

 ポンティアック工場の向かいにある労組事務所で話を聞いた。広報担当者は「工場がなくなれば、ポンティアックという市自体が消えてしまうだろう」と嘆いた。「いいかい? 私たちが生まれ育った町自体が消滅するんだ」

 ポンティアックといえば、筆者の世代にはなんといってもファイヤーバード・トランザムだ。ボンネットいっぱいに火の鳥を描いた70年代マッスル・カーだ。同じく70年代を象徴する胸毛にヒゲのスター、バート・レイノルズがトランザムでうるさいパトカーをやっつけるアクション・コメディ『トランザム7000』(77年)という映画まであった。それにしゃべる車『ナイトライダー』(特撮テレビドラマ)もトランザムがベースだったっけな。「ビューティフル・サンデー」のトランザムもたぶん、この車からバンド名を取ったはずだ。

 トランザム以外のポンティアックの車で有名なのは......思い浮かばない。サターンはGMが日本車に対抗して立ち上げた低価格小型車ブランドだが、こっちも名車と呼べるモデルがない。だからダメだったのだ。今回、バカ安で処分されるというので買ってみようかと思ってカタログを見ても、全然欲しくなる車がない。こりゃ、つぶれるよ。

 ポンティアックとサターン以外にも、2000年代にはアメリカからいろいろなものが消えた。

 2006年にはタワーレコーズが潰れた。家の近くにあったタワレコには、ほとんど毎日通った。CDよりも雑誌が目当てだった。タワレコには世界中のアングラな雑誌が置かれていた。お気に入りはイギリスの「Bizarre」という雑誌で、SM、ピアシング、タトゥーをはじめ、ありとあらゆるアングラ情報にあふれていた。テネシー大学の死体農場やウォシャウスキー兄に妻を寝取られたマッチョマン(実は元女性。筋肉スキンヘッド親父だが女性器がある)のグラビアは強烈だった。

 アメリカでは再販制度の廃止と共に独立経営の書店が全部つぶれて、新刊書店はBarnes&NobleとBordersの2大チェーンだけになってしまったのだが、その2つは、裸が載ってる雑誌は売らない。だから、タワレコだけがオアシスだった。どういう選択基準なのか「アップル通信」と「投稿ニャン2倶楽部」が毎号入ってたし。

 2009年初めには全米のバージン・メガストアも閉店した。サンフランシスコ、マンハッタン、ハリウッド、全米3大都市のド真ん中にはバージン・メガストアがあって、待ち合わせには最高だったのに。でも、しょうがない。いくら騒いでもCDの時代は終わるんだから。

 アメリカ最大のDVDレンタル・チェーン「ブロックバスター・ビデオ」が次々に閉店している。Netflixに押された結果だ。Netflixは郵便でDVDを配達し、返却の送料は無料、それにレンタル期限は無期限だから、既にアメリカの主流になってしまった。そのNetflixはすでにオンライン配信へのシフトを始めている。

 年末に大掃除してたら、10歳になる娘が赤ん坊の頃に撮ったミニDVテープが山ほど出てきた。観たいけど、観られない。ミニDVのカメラはとっくに壊れてしまったから。次に買ったDVDビデオカメラも既に時代遅れで、今の主流はFlipだ。

 それから、インタビュー録音用のMDレコーダーとMDディスクや、パソコン用のZIPドライブとCDドライブも出てきた。どっちもちゃんと動くのだが、持っていてもしょうがない。買ったのはついこの間なのに。

 HP(ホームページ)は滅び、ブログも飽きられ、SNS離れも進んでいる。今はTwitterだが、それも来年の今頃には「ダサッ」と言われてるね、このペースだと。