<昨年のオスカーで注目されたクロエ・ジャオ監督によるマーベル映画『エターナルズ』は、ミスマッチ感が拭えない>

マンガから抜け出してきたスーパーヒーローが世界を救う映画ばかりがヒットするここ十数年の状況を嘆かわしいと思うかどうかは別として、とても残念な事実が1つ。新進気鋭の才能ある監督にとって、その手の映画を撮ることが勲章か何かのように考えられていることだ。

いい例が、低予算のロードムービー『ノマドランド』でアカデミー作品賞と監督賞を獲得したクロエ・ジャオ。彼女には早速マーベル謹製のCG版スーパーカーのキーが授与され、宇宙の果てまで自在に駆け巡れることになったが、ルートや行き先を決めるのはマーベルだから、勝手な放浪は許されない。

いや、ジャオの手掛けた最新作『エターナルズ』が並のマーベル映画と大差ないと言うのではない。そこにはゲイの男たちもいれば聴覚障害のあるスーパーヒーローもいて、マーベル映画史上最も多様性に富むスーパーヒーロー軍団ができた。しかも、ジャオの愛する夕暮れ前の暖かい日差しあふれるシーンがたくさん登場する。

広島の原爆投下にも遭遇

しかし『アベンジャーズ』に代表されるスーパーヒーローものの系譜に照らせば、本作は最弱のレベルと言わざるを得ない。時空を超えて世界を、そして宇宙を駆け巡る物語なのに、なんだか質素なスタジオで撮影されたドラマみたいな閉塞感がある。

主役のエターナルズは、遠い昔に「セレスティアルズ」と呼ばれる宇宙神によってつくられた不死身の超人たち。何千年も前から素性を隠してこの地球上に暮らし、普通の人間として生きてきた。そして広島への原爆投下を含む人類の愚行に何度も遭遇し、そのたびに、できる限りのことをしてきた。

しかし彼らには、人間界で起きる出来事への介入は禁じられている。どうしても見逃せない人たちを救うことはできるが、愚かな人間の愚かな選択による悲惨な歴史を変えることは許されない。

しかしある日、謎の怪物種族「ディヴィアンツ」が地球に襲い掛かり、エターナルズはやむなく地球防衛に立ち上がることになった。首領格のエイジャック(サルマ・ハエック)は米サウスダコタ州の牧場で引退生活を送っていたが、意を決して各地に潜伏する仲間たちを召集した。

地球人の暮らしに最も溶け込んでいたのはセルシ(ジェンマ・チャン)だ。本作の主人公と言ってもいい存在で、昼間はロンドンの自然史博物館で働いている。彼女が持つ超能力は、どんな物質も別な物質に変えてしまう力だ。巨大な落下物に押しつぶされそうな子供を、この超能力で救うシーンが、前半に2回ある。

監督の個性が見えない
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