Brenda Goh Tamiyuki Kihara David Brunnstrom
[ソウル/東京/ワシントン 6日 ロイター] - トランプ米大統領は、中間選挙の散々な結果を受けて、残り2年の任期は政治的レガシー(遺産)を外交で構築しようとするとみられる。とはいえ、ウクライナとイランは今のところ打開の糸口が見えない。アナリストや当局者は、トランプ氏が北朝鮮に目を向ける可能性があるとみる。ただ、北朝鮮側は米国と交渉する必要性は薄れており、ひとたび交渉に入れば、譲歩の圧力はトランプ氏のほうにかかる可能性があると指摘する。
トランプ氏は、金正恩朝鮮労働党総書記との対話再開に意欲を示している。米国の同盟国である日本と韓国は、トランプ氏が北朝鮮に対し何らかの譲歩をするのではないかと懸念している。
韓国国立外交院のパン・キルジュ教授(国際関係論)は「特に内政面での制約が強まれば、トランプ氏は外交で成果を上げることに相当力を入れるだろう」と述べた。「トランプ氏は2028年(の大統領選)で後継者に勝ってほしいはずだ。北朝鮮との関与がその課題の一つになる可能性は高い」という。
トランプ氏は第1次政権で、金氏と3回会談した。19年2月にハノイで行った首脳会談は、北朝鮮の核兵器開発計画と制裁緩和を巡って折り合えず、合意なしに終わった。
あれから7年が経過した今、北朝鮮の状況は往時と異なる。核・ミサイル戦力を拡大し、中国はもとより、ロシアとも関係を深めている。暗号資産(仮想通貨)交換業者バイナンスの過去最大規模の暗号資産盗難など、世界各地で起きたサイバー攻撃への関与も指摘されている。
米韓の当局者は、米朝首脳会談の年内開催の可能性は低いとみている。会談が行われるとすれば、中国・深センで今月開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて設定される可能性があったが、北朝鮮側から反応はない。金氏の妹、金与正党総務部長は、米国が敵視政策をとっていると非難している。
トランプ氏が金氏を交渉の場に戻すには、制裁の一部緩和以上のものを示す必要があるかもしれない。金氏は以前、米国が北朝鮮に核兵器の放棄を求めることをやめれば、対話に応じる用意があると述べていた。韓国と日本は、そうした譲歩に反対している。
匿名を条件に取材に応じた日本政府高官によると、日韓の当局者は、トランプ氏が中国とロシアの政府の暗黙の了解の下で金総書記と直接取引すれば、自分たちが「蚊帳の外」に置かれかねないと心配している。
同高官は「(日本政府関係者は)トランプ氏が北朝鮮の金正恩氏との首脳会談を実現するために、非核化の問題を取り下げるなど、どこまで踏み込むのかを懸念している」と語った。
梨花女子大学(韓国ソウル)のレイフエリック・イズリー教授(国際学)は「非核化を棚上げする首脳会談は抑止力を損ない、米韓日の政府間に政策面での摩擦を生む」と述べた。
上智大学の前嶋和弘教授は、米朝協議の結果、米国が北朝鮮を核保有国として認めれば、アジアの安全保障環境は劇的に変わると指摘し、「トランプ政権の残り2年間で、第2次世界大戦以来最大の変化が起こり得る。深刻な事態だ」と述べた。
韓国大統領の安全保障担当補佐官を務めた、延世大学(韓国ソウル)の文正仁教授は、そうした譲歩には、民主党が多数派を握ることになった議会などの障害があると指摘する。その上で「重要なのは北朝鮮の認識と計算だ。トランプ氏がレームダック(死に体)の時期に入り、議会の支持を得られないと北朝鮮が考えれば、金氏が対話に出てくる理由はない」と述べた。
第1次トランプ政権で米国の対北朝鮮交渉を率いたビーガン元米国務副長官も、北朝鮮には今のところ米と交渉する動機が乏しいとみる。
「北朝鮮にとって、今こうした会談に臨んでも得るものはほとんどなく、むしろ損になる面もあると思う」と語った。
トランプ氏の北朝鮮外交の計画について問われたホワイトハウスは、トランプ氏は国際舞台で米国の強さを取り戻し、世界の指導者との関係を強めたと答えた。ケリー報道官はロイターへのメールで「大統領の外交政策の決定が政治的な動機に基づいたことは一度もない」とし、「最高司令官は常に米国民の最善の利益とわれわれの国家安全保障のために行動する」と述べた。