Aditya Soni

[4日 ロイター] - 米中間選挙で共和党が歴史的大敗を喫し、テキサス州では約30年ぶりに民主党の知事が誕生する中、今回の選挙で大きな打撃を受けた人物の1人は候補者として出馬していなかった。実業家で大富豪のイーロン・マスク氏だ。

マスク氏は共和党候補を支援し、テキサス州を共和党の地盤として維持するために5億ドル(約790億円)近くを投じた。テキサス州にはマスク氏が率いる自動車メーカーのテスラや、ロケット事業から人工知能(AI)事業まで手掛けるスペースXが拠点を置き、両社による半導体製造事業も計画されている。

しかし民主党が連邦議会の上下両院で多数派を奪還し、テキサス州知事選でも民主党のジーナ・イノホサ氏が共和党現職のグレッグ・アボット氏を破ったことで、マスク氏の賭けは崩れ、同氏が当選を後押しした盟友トランプ大統領に対する痛烈な拒絶を示す結果となった。

マスク氏は3日にも、X(旧ツイッター)でフォロワーに共和党候補への投票を呼びかけていた。だが今後は、長年にわたり対立してきた民主党が勢いを取り戻す中で事業を進めなければならない。

共和党最大の献金者であるマスク氏は先月、民主党が中間選挙で勝利した場合、自身の企業に対する調査を検討しているとの報道を受け、X上で報復すら示唆していた。

選挙結果を受け、スペースX株は5.5%、テスラ株も5.1%下落し、両銘柄はいずれも市場全体の値動きを下回った。

マスク氏にとって大きな課題の1つとなりそうなのが、データセンター建設の認可手続きが遅れる可能性だ。スペースXは新規株式公開(IPO)を前に投資家に対し、潜在的な市場規模を28兆5000億ドルと説明しており、データセンターはこの市場を取り込む上で重要な役割を担う。

アナリストや専門家らは、電力コストを巡る地域住民の反発が強まる中、民主党がデータセンター計画への監視を強化し、建設の一時停止を求める可能性があるとみている。

ロングボウ・アセット・マネジメントのジェイク・ダラーハイド最高経営責任者(CEO)は、「民主党が上下両院を全面的に制すれば、ハイテク業界への圧力が強まり、AI関連のあらゆる分野で規制が強化される可能性がある。当然視されてきた急成長にもブレーキがかかりかねない」と指摘。「マスク氏は、土壇場で共和党が頼みとした最後の切り札だった。だが、共和党陣営を支援するために巨額の資金を投じても、光熱費や食料品価格、ガソリン価格の高騰には太刀打ちできなかった」と述べた。

マスク氏を巡っては、ウクライナ軍が使用する衛星通信への制限や、同氏が主導した「政府効率化省(DOGE)」による連邦政府職員の大量解雇、さらに同氏の企業が受け取っている政府契約や補助金を巡り、民主党議員から厳しい追及を受けている。

民主党議員の一人で、次期下院監視委員長のロバート・ガルシア氏は3日夜、共和党とその関係者に向けて「弁護士を雇え」と端的に警告した。

<次期知事、データセンター建設の一時停止要求>

テキサス州でマスク氏は、すでに悪化しているイノホサ次期知事との関係への対応を迫られる。さらに、共和党候補のケン・パクストン氏を支援するために多額の資金を投じたにもかかわらず、対立候補のジェームズ・タラリコ氏が新たに上院議員として選出された。

イノホサ氏は、マスク氏とアボット氏の間で交わされた電子メールの開示を求めて提訴していた。また前知事のアボット氏がマスク氏に有利な条件を提示し、テキサス州を売り渡したと批判していた。

アボット氏によるデータセンター規制の取り組みについて、イノホサ氏は「政治的パフォーマンス」にすぎないと一蹴。その上で、地域保護の制度が強化されるまで新規計画を直ちに停止し、税優遇も廃止するよう求めている。

マスク氏自身は、こうした逆風を冗談めかして受け止めているようだ。「今は宇宙にあるデータセンターが、かなり魅力的に見える」とXに投稿。スペースXが進める、データセンターを軌道上に設置するという野心的な構想を示唆したものだが、この計画は設備の冷却や修理などに大きな課題を抱えている。

スペースXのAI事業は、テネシー州メンフィス近郊にある世界最大級のAIデータセンター「コロッサス」と「コロッサス2」を中核とする。アンソロピックなどの顧客に計算能力を貸し出す事業が収益を大きく押し上げ、スペースXの上場後初の黒字化を後押しした。

同社はデータセンターの容量を、9月末時点の1.7ギガワットから年末までに最大3ギガワットへとほぼ倍増させ、さらに来年には13ギガワットに拡大する計画だ。

稼働開始が遅れれば、マスク氏が掲げる野心的な売上高目標の達成が難しくなる恐れがある。また、AIインフラのコスト膨張を警戒する投資家の目を一段と厳しくする可能性もある。

半導体業界の調査会社セミアナリシスによると、テキサス州ボカチカのスペースX「スターベース」複合施設の新設備を含め、計画・開発段階にある容量は9ギガワットを超える。

ただボカチカでの拡張計画は、反発に直面する可能性がある。テキサス州当局が沿岸部の州立公園をスペースXに売却する案を協議していたと報じられたことを受け、イノホサ氏は売却に反対する姿勢を表明。先月「はっきり言っておく。テキサス州は売り物ではない」と述べた。

一方のマスク氏は、投票日にXでフォロワーに対して共和党への投票を呼びかけた投稿を削除した。

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