Hannah Lang
[30日 ロイター] - 暗号資産(仮想通貨)交換所各社が防御体制の強化を急ぎ、業界全体での情報共有拡大を呼びかけている。バイナンスへのハッカーの攻撃により過去最大となる63億ドル相当の流出が起き、既存の金融システムとの結び付きが深まる中で業界の脆弱性が露呈したためだ。
コインベースは「万全を期すため」として、暗号資産の鍵をオフラインで保管するシステムに調整を加えたと説明。クラーケンは、自社の防御に生かせる教訓を得るため、業界で発生する事案を注視しているとした。
ただ、同業界には早急な対応が必要だとアナリストや業界幹部は指摘する。トランプ米政権下で規制当局がデジタル資産と金融システムの一段の統合を推進する中、大規模なハッキングを繰り返し経験してきた同業界にとって、被害が及ぼす影響は大きくなっている。
フランクリン・テンプルトンの暗号資産部門責任者クリス・パーキンス氏は「暗号資産がその潜在力を最大限に発揮するには、セキュリティーの問題に直ちに対処しなければならない」と述べた。
バイナンスへの攻撃を受け、競合する暗号資産交換所は30日、自社システムの強化と、顧客が保有するトークンの安全性を巡る懸念払拭に向け迅速に動いた。
クラーケンの広報担当者は「専任チームが潜在的な脆弱性を毎日探している」と述べた。
暗号資産史上最大の盗難事件に業界が揺れる中でも、業界幹部らは、バイナンスには損失を補塡する十分な資金があり、今回のハッキングによる金融面の影響が広範囲に及ぶことはないとの見方を示した。
暗号資産企業GSRの最高法務・戦略責任者ジョシュ・リーズマン氏は「バイナンスが今回の不正侵入に直接対処しなければならないのは明らかだが、業界全体では実際には重大な損失を被らないと予想している」と述べた。
一部の幹部は30日、業界で連携してハッキングを検知するシステムの構築を呼びかけた。
暗号資産交換所OKXのスター・シュー最高経営責任者(CEO)はXに「ハッキングが発生した際に、参加者が直ちに情報を共有し、連携して迅速に対応し、盗まれた疑いのある資金を一時的に凍結できるリアルタイムの警報システムが必要だ」と投稿した。
GSRのリーズマン氏は、今回の事件が業界の行動を促す可能性があると指摘。「伝統的な金融とデジタル資産が融合する今、改善を続けることが重要なのは明らかだ。今回の事件は、むしろそのきっかけになると思う」と述べた。