Aditya Soni Deborah Mary Sophia

[29日 ロイター] - キャッシュフローが王座に返り咲いた--。人工知能(AI)関連投資があまりにも膨れ上がった今、米株式市場では巨大テクノロジー企業の現金創出能力が再び重視されるようになっている。

米ビックテックの決算で、投資家から評価されたのが、際限なく資金調達することなくAI投資資金をまかなえることを示したマイクロソフトとオラクルだ。

対照的にグーグル親会社アルファベットは巨額のキャッシュ流出が嫌気され、さらにAI事業拡大の原資となってきた検索部門の成長鈍化に懸念が強まっている。

アマゾン・ドット・コムも、約5年ぶりの高いクラウド事業成長率を達成したにもかかわらず、第3・四半期の大幅なキャッシュ流出と慎重な第4・四半期見通しを受けて売りを浴びた。

アルファベット株は29日に12%超下がり、時価総額約5000億ドルを喪失。下落率は同社株にとって過去最大となった。アマゾン株も決算発表後の時間外取引で一時6%超下落した。

マイクロソフト株は一時上昇したものの、9年超ぶりとなる米国での投資適格債発行で250億ドルの調達を計画しているとの報道を受け、上げ幅を縮小し、ほぼ横ばいで取引を終えた。

これらの市場の反応は、今まで投資家がコンピューティング能力確保のための積極投資を容認し、時には借り入れによる資金調達さえ歓迎してきたのに対して、今後はそうした投資による成長が次の投資資金を十分賄えるのかを、より厳しく見極めようとしていることを物語っている。

その兆候は既にメタの値動きで見られていた。先週公表した決算では、予想を上回る増収と強気の見通しを示したにもかかわらず、大幅なキャッシュ流出が注目され、市場の反応は鈍かった。

一方、オラクル株は28日の通常取引で約11%上昇した。外部資金調達に上限を設ける方針を示し、2028年度下期にはキャッシュフローが黒字化するとの見通しを示したことが好感されたためだ。

ザックス・インベストメント・マネジメントのチーフ市場ストラテジスト、ブライアン・マルベリー氏は「4大クラウド事業者全てでクラウド需要とAI需要の伸びが確認された。ただ、事業運営という観点では、マイクロソフトだけが成長投資を続けながら同時にキャッシュも生み出しているように見える」と分析した。

マイクロソフトも負債による資金調達を始めているが、その規模は同業他社に比べればなお小さい。今年に入ってからグーグルは債券発行や株式発行を通じて1400億ドル超を調達し、メタは625億ドル、アマゾンは債券発行で980億ドルを確保している。

アマゾンは9月30日までの12カ月間で424億ドルのキャッシュ流出を計上。第3・四半期の設備投資は772億6000万ドルと市場予想を大きく上回った。アンディ・ジャシー最高経営責任者(CEO)は、26年の2200億ドル規模の投資に続き、27年にはさらに大幅な投資拡大を見込むと述べた。

インベスティング・ドットコムのシニアアナリスト、ジェシー・コーエン氏は「重要なのは表面的な業績数字ではなく、その裏側にあるキャッシュの流れだ。アマゾンの決算は、同日に急落したアルファベットに対する警戒感が高まる中で、投資家を安心させるような見通しも示せず、二重の失望となった」と指摘した。

とはいえアマゾンは、不安払しょくに向けてAI事業が3桁成長を続けていることを強調。ジャシー氏も、現在の投資が将来的により大きなフリーキャッシュフローを生む事業につながるとの確信を深めていると訴えた。

アルファベットは、第3・四半期の設備投資額が営業キャッシュフローの121.4%に達した。これに対し、マイクロソフトはファイナンスリースを除くベースで68%だった。

この比率が低いほど、自社株買いや配当、債務返済に回せる資金が多く残る。100%を超える場合は、本業で生み出した資金以上を投資に使っており、不足分を手元資金や借り入れで補う必要がある。

S&Pグローバル・ビジブル・アルファの調査責任者、メリッサ・オット氏は「アルファベットとマイクロソフトは対照的だった。マイクロソフトは規律ある成長を示したが、グーグルは資金を使い続けており、中核事業も市場予想を下回った。AIがグーグル検索のシェアを奪い始めているのではないかとの疑念を投資家に抱かせかねない」と語った。

グーグル検索の第3・四半期売上高伸び率は12%と、市場予想の14.7%増に届かなかった。サンダー・ピチャイCEOは検索件数が過去5年間で最も速いペースで増えていると説明したものの、市場の懸念を和らげられなかった。

高収益を誇ってきた検索事業が直面しているのは、ユーザーの情報収集方法を変えつつあるAIチャットボットやAIエージェントによる脅威だ。その一方で同社はAI開発にさらに資金を投じており、アナト・アシュケナージ最高財務責任者(CFO)は27年に設備投資が大幅に増加するとの見通しを示している。

<積極投資必要論も>

アルファベットの巨額投資は、もう一つの重要なAI事業であるグーグル・クラウドの成長を後押ししている。グーグル・クラウドの売上高は307億1000万ドルと倍増以上の伸びを示した。しかし、その成長を上回る投資負担が利益を圧迫し、第2・四半期に初のマイナス・フリーキャッシュフローを記録した後、今回のキャッシュ流出額は90億7000万ドルに達した。

それでもアルファベット株を保有するチェック・キャピタルのシニア投資責任者、ジェレミー・サルツバーグ氏は「今のグーグルは3年、5年、10年前とはまったく異なる事業になっている」と主張。投資拡大への懸念に反論して「オープンAIやアンソロピックがAIモデル開発競争で先行しているように見える中、競争力を維持するには巨額投資が不可欠だ。これは王者だけが戦える競技で、来年1500億ドルを設備投資に投じる余力がないのであれば、最初から参加しない方がいい」と積極投資の必要性に言及した。

<マイクロソフトの存在感突出>

もっとも、主要クラウド事業者4社の中で際立った存在感を示したのは、やはりマイクロソフトだった。同社は7-9月期に186億ドルのフリーキャッシュフローを計上した。これは市場予想を約100億ドル上回る水準であり、同時に452億ドルを投じて計算処理基盤の拡張も進めている。

クラウド事業「アジュール」の売上高は48%増と市場予想を上回り、会社側は10-12月期も市場予想を超えるクラウド成長率を見込んでいる。

また今回の決算からは、AI需要がこれまでの支えとなってきたオープンAIなど一部の大口顧客に限られず、より広範な市場へ拡大している様子もうかがえる。

サティア・ナデラCEOは「目新しい技術ばかりに注目する時期は過ぎつつある。多くの企業が、最新かつ最も高性能なAIモデルを試す段階から、長期契約を結ぶ段階へ移りつつある」と説明した。

その上で「われわれが重視しているのは裾野の広がりだ。大口顧客の中には当社から購入したいと考える企業が多い。適正な価格であれば提供するし、そうでなければ焦らず裾野を広げていく」と語った。

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