クマ対策にドローンは有効なのか

だからこそ様々な「クマ対策」が講じられているが、なかでも印象的だったのは、クマと人との遭遇リスクを回避するための手段のひとつとして注目が集まっているというドローンだ。

著者はこのことについて、秋田県ドローン協会代表理事の金森昌亮氏に現状と課題を聞いている。

 ドローンの最大の強みは「赤外線カメラ」による熱探知です。秋田では2021年ごろから建物の外壁調査やタイルの雨漏りなどの把握目的で使われていましたが、クマの大量出没や人身被害が多く起き始めたことで、クマ対策に使われることが増えました。(152ページより)

赤外線カメラで見れば、肉眼では確認が困難な夜間や早朝でも、野生動物の位置を把握しやすくなったそうだ。最新機種だとズーム機能によって2〜3キロ先からでも対象を特定できるため、ドローンの存在を気づかれることなく、クマとの間に安全な距離を保ちながら監視できるのだという。

またカメラだけでなく、「高出力スピーカー」やライトを搭載できる機種が登場しているため、半径500メートルの広範囲に音や光を送ることができる。「見守る」だけでなく、音や光によってクマを追い払う手段としても期待されているわけだ。さらに追い払う際には、スピーカーから猟犬の声や、人が話したマイクの声、また超音波の高音も出せる。

発見したクマを自動で追いかけ、その移動ルートや寝場所を特定できるという「スマートトラック」(自動追尾機能)にも、根本的な対策につなげられる可能性があるだろう。

もちろんこれらが性能のすべてではないが、スーパーなど建物の中でも効果を発揮しているというので、今後の技術の発展と活用にも期待が持てそうだ。

ドローンのような新しい技術は、クマとの遭遇リスクを減らす有力な手段になり得る。しかし、それだけですべての被害を防げるわけではない。クマが人間の生活圏に現れることを前提に、地域の実情に応じた対策を考える必要があるのだろう。

『ルポ クマ襲撃』

 『ルポ クマ襲撃: 被害最多県 秋田の現場から』

  工藤 哲・著
  平凡社新書

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[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。他に、ライフハッカー[日本版]、東洋経済オンライン、サライ.jpなどで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」などにも寄稿。『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『この世界の中心は、中央線なのかもしれない。』(辰巳出版)など著作多数。2020年6月、日本一ネットにより「書評執筆本数日本一」に認定された。

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