Michael S. Derby

[21日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が保有資産を大幅に縮小するためには、銀行に対する流動性供給の枠組みを見直し、必要に応じて資金を供給する新たな制度を導入するとともに、銀行の手元資金保有に関する規制を緩和することだ--。米シンクタンクのブルッキングス研究所が新たな論文でこうした見解を示した。

論文を執筆したブルッキングス研究所ハッチンス財政・金融政策センターのクリス・ヒューズ非常勤フェローは、一連の改革によってFRBの総資産は現在の約6兆8000億ドルから約4兆500億ドルまで縮小が可能になると指摘。金融システム内の準備預金残高も現在の約3兆ドルから約1兆ドル程度まで減少すると算定した。

FRBのウォーシュ議長がバランスシートの縮小を重視し、その実現策を検討する作業部会を設置したことから、今こそ大胆な制度改革を検討すべき時期だと論文は主張する。

ヒューズ氏は「FRBの運営システムを見直す機会はそう多くない。この機会を無駄にすべきではない」と力説した。

さらに改革が実現すれば「FRBの資産規模の対国内総生産(GDP)比は2008年以降で最も小さくなり、銀行に支払う利息も約3分の1程度まで減る」と説明した。FRBは近年、保有資産に対する利払い負担の増加により前例のない赤字状態に陥っている。

提案の柱となるのは、現在の「潤沢な準備預金」制度からの転換だ。この制度では、FRBが金融システムに大量の資金を供給し、複雑な政策手段と定期的な資産購入を通じて短期金利を誘導している。

ヒューズ氏はこれに代えて、市場の資金需要に応じて流動性を機動的に供給する「弾力的準備預金」という新制度を打ち出した。

潤沢な準備預金制度は約20年前の世界金融危機後に構築され、FRBはゼロ近辺まで引き下げた政策金利を補完するため大規模な債券購入を実施し、景気刺激と市場安定化を図った。新型コロナウイルス禍でも大規模な資産購入を行い、保有資産は1兆ドル未満から22年には9兆ドルまで拡大。その後は保有債券の縮小を進めている。

一方、現在のFRB当局者の多くは、資産規模は大きいものの潤沢な準備預金制度は実際の市場環境で有効に機能していると考えている。また多額の現金を保有する銀行の方が金融不安時への耐性が高いとの見方も少なくない。

ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は9月22日の講演で「現在の制度は金利コントロールと主要金融市場の円滑な機能維持に極めて効果的であることが証明されている」と発言した。

ただ大規模な資産保有に批判的な立場のウォーシュ氏らの見解では、FRBによる国債や住宅ローン担保証券(MBS)の大量保有が金融市場をゆがめるほか、長期金利形成への関与を強め過ぎているとされる。もっともウォーシュ氏自身も、現在の制度は長年かけて構築されたものであり、短期間では変更できないと認めている。

ヒューズ氏は論文で「金融政策の有効な運営に大規模で固定的な準備預金残高は必要ではない。より小規模な恒常的準備預金を、柔軟な融資制度で補完することで十分対応できる」と訴えた。

そのためFRBが市場への資金供給を減らす場合には、適格金融機関へ迅速に資金を供給する常設レポ制度について利用上限を撤廃し、準備預金への付利金利を上回る金利を設定すべきだと提言した。また幅広い担保を対象に4カ月物資金を入札方式で供給する新たな「期間流動性ファシリティー」を創設する案も示した。

さらに緊急融資手段である窓口貸出の維持や、FRB保有資産を長期債中心から短期国債中心へ移行させる必要性に言及し、政策運営の目標金利についてはフェデラルファンド(FF)金利ではなく、担保付翌日物調達金利(SOFR)を採用するよう求めた。

ヒューズ氏はこうした新たな流動性供給制度の導入と並行して、銀行規制の見直しや財務省によるFRB当座預金口座の運用変更などを通じ、金融機関の準備預金需要そのものを引き下げる必要性も強調。「新たな流動性供給制度と準備預金需要を抑制する政策は相互補完的な関係にあり、どちらか一方だけでは恒久的なバランスシート縮小は実現できない」と付け加えた。

FRBの作業部会に対しては、単なる選択肢の列挙ではなく、資産縮小に向けた具体的な工程表を示すよう促し「運営システムの刷新には複数の政策手段と権限が関わるため、議長の強いリーダーシップが不可欠だ」と述べ、必要なら議会による法制化も選択肢になるとの考えを示した。

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