Joe Brock

[21日 ロイター] - 電気自動車(EV)大手テスラと宇宙開発企業スペースXの最高経営責任者(CEO)を兼ねるイーロン・マスク氏は20日、両社の統合は良い案だと述べた。実現すれば時価総額が約3兆5000億ドルと世界最大級となる企業が誕生することになる。

両社はかつて、全く異なる事業を手がける企業とみられていた。しかし、マスク氏が人工知能(AI)、ロボット工学、先端製造、衛星通信、さらには地上や将来的には軌道上のデータセンターを含むコンピューティング基盤へと事業を広げるにつれ、その境界は曖昧になっている。

経営統合が持つ意味を以下にまとめた。

<なぜマスク氏は統合を進めるのか>

統合によって、マスク氏の長期構想の中核を担う単一の企業が誕生する。それは地上から宇宙まで、AI、エネルギー、ロボット工学、通信、輸送にまたがる一体的な技術・製造の巨大企業だ。

マスク氏は20日、「われわれは超知能によるシンギュラリティー(技術的特異点)にほぼ到達しており、両社の統合には大きな利点があると思う」とし、超知能ソフトウエアの開発、半導体設計、半導体合弁事業テラファブ、ロボット工学、軌道上データセンターとなるスターマインド衛星群の構築に向けた輸送能力、通信接続の分野で協力することで多くを得られると語った。

両社の統合は意思決定を簡素化する可能性もある。マスク氏のプロジェクトの多くは既に複数の企業にまたがり、それぞれの取締役会や株主の承認を必要としている。統合会社になれば、経営陣は資本、技術者、インフラを最も有望と見る分野に振り向ける自由度が高まる。

マスク氏は以前から、テスラのAI・ロボット戦略を推進するには、同社への影響力を強める必要があると主張してきた。同氏はテスラ株の2割近くを保有し、スペースXでは議決権を通じて経営を支配している。合併は同氏の影響力を集約することになり得る。

<投資家にとっての意味は>

テスラの株主は、スペースXの急成長する衛星ブロードバンド通信「スターリンク」や打ち上げ事業、将来の宇宙事業にも投資することになる。一方、スペースXの投資家は、テスラの自動車、蓄電、自動運転、ロボット事業を保有することになる。

統合会社は、自動車、ロボット工学、衛星通信、打ち上げサービス、蓄電、AIインフラでそれぞれ主導的な地位を持つ事業を束ね、時価総額約3兆5000億ドルと世界で最も価値の高い企業の一つになる可能性もある。

合併支持派は、相互依存が強まる事業間で、統合会社がより効率的に資本を配分できると主張するとみられる。

一方で批判派は、投資家がはるかに幅広い技術面、規制面、事業遂行上のリスクを負うことになり、その中には互いにほとんど関連しないものもあると指摘する。

<両社が協力できる分野は>

スターリンクの衛星は、テスラのロボタクシーや自律システム、将来世代の人型ロボット「オプティマス」に通信回線を提供できる可能性がある。テスラの電池や蓄電製品は、将来のデータセンター計画を含め、スペースXで拡大する電力需要を支える一助となり得る。

マスク氏は既に、両社の大型協業計画となるテラファブを発表している。半導体・AIコンピューティング事業で、テスラの自動運転車やオプティマスに必要な先端半導体を生産するとともに、スペースXのAI・データセンター構想にも対応することを目指す。マスク氏は2028年後半までの量産開始を望んでいる。

テスラが持つ大規模な工場自動化の専門技術は、スペースXによる大型宇宙船「スターシップ」の量産体制構築を補完できる可能性がある。一方、スペースXの技術は既にテスラ製品にも取り入れられている。特に注目されるのが、次世代「ロードスター」にロケット技術を応用した部品を採用する計画だ。

統合会社は、戦略的に重要なサプライチェーン(供給網)の確保でも足並みをそろえられる可能性がある。電池、半導体、製造装置におけるテスラの事業規模と、特殊金属、電子機器、推進装置の部品、衛星機器に対するスペースXの需要を組み合わせて活用できる。

<リスクは何か>

最大の課題は地政学と規制かもしれない。

スペースXは米軍、情報機関、米航空宇宙局(NASA)の主要な契約先だ。一方、テスラは自動車の生産・販売で大きな役割を果たす上海工場を通じ、中国との深い結び付きを維持している。両社の統合によって、米国の規制当局や国家安全保障当局に加え、中国政府からも監視が強まる可能性がある。

統合には株主の理解や企業統治の面でもハードルがある。既に複雑な事業を抱える2社を統合した方が、別々に存続させるより多くの価値を生み出せると、投資家を納得させる必要がある。利益相反や議決権による支配、資本配分を巡る疑問も必然的に浮上するだろう。

さらに、事業遂行上のリスクもある。スターシップ、ロボタクシー、人型ロボット、AIデータセンター、移動体通信、軌道上インフラは、いずれも巨額の費用を要し、技術的に困難な賭けだ。テスラとスペースXを統合しても、こうしたリスクは軽減されるわけではなく、単に一つ屋根の下に集約されるだけになる。

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