10月初旬、米国防総省は英南部のフェアフォード空軍基地から爆撃機12機を撤収させた。関係者によれば、米軍が懸念したのはイランによるドローン攻撃。昨年6月にウクライナ軍が実施した「クモの巣作戦」を模した攻撃を警戒していたとみられる。
この作戦では、ウクライナ軍が貨物コンテナに隠したドローンを使い、ロシア各地の軍用機に奇襲攻撃を仕掛けた。作戦から1年以上たった今も、爆撃機の撤収が示すように、ドローンの大群から基地を守る能力ではアメリカもロシアと似たり寄ったりだ。
世界最強の米軍が屈辱的な撤退をするわずか数日前、ピート・ヘグセス国防長官はバージニア州のクワンティコ海兵隊基地で演説し、侮蔑的な表現でトランスジェンダーや「太った」兵士らを米軍から追い出したと自画自賛した。「イデオロギーに取りつかれた道化たちは去り、愛国的なカウボーイが戻ってきた。おまけに、テストステロン検査付きだ」
さらにヘグセスは、イーロン・マスクやドローン業界の大物パルマ・ラッキー、共和党の重鎮ニュート・ギングリッチ元下院議長の協力を得て、軍への最新技術の導入を促進する方針も発表した。ただし、防衛関連事業に巨額の投資をしているマスクは利益相反の塊のような人物だ。ラッキーも政権と親しい実業家で、高齢のギングリッチにはテクノロジーの専門知識はほとんどなさそうだ。
この演説でヘグセスは報道機関を裏切り者と激しく非難し、イラン戦争での成果を声高に誇り、中東での長期展開を終えた原子力空母エイブラハム・リンカーンでの士気低下問題を否定した。だがアメリカの戦略目標や、米軍の戦力を増強する上で何より重要な世界の同盟国との関係については何も語らなかった。