仕事は生活費を稼ぐためだけのものではない。人と接し、問題を解決し、新しいことを覚えるといった活動が、年を取ってからの脳の健康にも関係している可能性がある。
米コロンビア大学メールマン公衆衛生大学院の研究チームが9月23日に発表した研究によると、中年期に安定した雇用を維持していた人は、高齢になってからも認知機能が良好な傾向にあった。反対に、失業や就労の中断を繰り返した人、早期退職した人などでは、記憶力や思考力に関する検査の成績が低い傾向が確認された。
2418人(女性1470人、男性948人)を対象に、1998年から2014年までの16年間にわたる雇用状況と仕事に対する不安を調べ、2016年に実施された認知機能検査の結果と比較した。
なかでも興味深いのは、その影響が男女で異なっていたことだ。男性の場合、雇用が不安定だった人の認知機能には、安定して働いていた人と比較して、およそ7年分の認知的老化に相当する差がみられた。一方、女性では早期退職や長期間の労働市場からの離脱が、約6年分の加齢に相当する記憶機能の差と関連していた。
研究では、単に働いていたかどうかだけでなく、本人が職を失う不安を感じていたかどうかも考慮した。研究チームは、雇用の有無と雇用不安を組み合わせた7種類の状態をもとに、16年間の就労履歴を分析。男女それぞれについて、安定就労や早期退職、不安定就労などの特徴を持つ6つのグループに分類した。
結果、仕事を失うかもしれないという主観的な不安以上に、実際に雇用が継続していたかどうかが、その後の認知機能と強く関連していることが分かった。研究の筆頭著者であるエリカ・バイデルマンは、認知機能の老化を防ぐ上では、主観的な雇用の安心感よりも、雇用の継続性の方が重要な保護要因である可能性を指摘している。