連邦議会議員による株式売買を快く思う人は少ない。メリーランド大学の世論調査では、アメリカ人の10人中8人以上が個別株取引の禁止に賛成した。民主・共和両党が規制に乗り出したのも当然だ。
それでも米議会では、いまだに取引禁止法案が成立していない。下院を通過した「インサイダー取引阻止法案」は、上院で民主党と無所属の議員全員が反対し、賛成53票、反対47票で審議入りに必要な60票に届かなかった。
この採決が民主党の印象を悪くするのは明らかで、共和党もそれを狙っていた。中間選挙の投票先を問う世論調査で、共和党は民主党に8ポイント以上の差をつけられている。今回の採決は流れを変えるだろうか。いや、事はそう単純ではない。
まず、この法案は議員とその家族に保有株の売却を義務付けず、事前に情報を開示すれば売却もできる内容だった。「骨抜きになった共和党の株取引規制法案は、潜水艦に網戸を付けるくらい役に立たない」と、上院民主党トップのチャック・シューマー院内総務は批判した。さらに、民主党が「毒薬条項」と呼ぶ、投票時の有権者の身分証明書提示義務も抱き合わせで盛り込まれていた。
この採決で考えを変える人もいるだろうが、多くはないだろう。議会では政治的な思惑から行われる採決は珍しくなく、政治に関心のある有権者なら、その狙いを見抜けるはずだ。一方、ギャラップの調査によれば、国政ニュースを「非常に注意深く」追うアメリカ人はわずか32%。大多数の有権者は今回の採決そのものに関心を払わないだろう。
少なくとも民主党はそう計算しているようだ。トランプ大統領の支持率が37%にとどまるなか、民主党が株取引をめぐる話題として狙うのは大統領自身の取引だけだ。
本格的に中間選挙の選挙戦が始まれば、注目が集まるのは今回の採決よりもトランプの株取引問題だろう。
鉄道黄金期を迎えたヨーロッパを旅する――コリン・ジョイス(ジャーナリスト)/豪快かつ特異なアメリカ大陸鉄道史/膨張する中国鉄路の野望/「夢の超特急」リニアの現実/韓国、アフリカ、インド……世界を駆ける鉄道新事情