Tamiyuki Kihara Yoshifumi Takemoto
[東京 14日 ロイター] - 高市早苗首相が14日にも簗和生農林水産相(自民党衆院議員)と面会する。焦点は簗氏の進退で、更迭となれば昨年10月の政権発足後、初めてとなる。高市氏が対応を急ぐ背景には、「悲願」とする消費減税法案の審議を控えた国会の事情があるとみられる。野党は簗氏の辞任を求めて問責決議案の提出を検討し、高市氏の任命責任も問う構えだ。簗氏が続投となれば、与党が過半数を割る参院では法案審議に大きな影響が出かねない。
<見え隠れする高市首相の迷い>
「しっかりと話を聞きたい」。高市氏は13日夜、記者団の取材に応じ、簗氏と14日にも直接面会して説明を求める意向を示した。
9月の内閣改造で初入閣した簗氏をめぐっては、大きく二つの問題が噴き出している。一つは、2月の衆院選で自身を支援しなかった首長のいる地元自治体の道路予算を「大幅にカットした」と述べた発言。もう一つは、過去2回の衆院選の公示日に、陣営が手配したシャトルバスで支援者を出陣式に無料送迎したとされる問題だ。
簗氏は10月、道路予算を巡る発言を撤回して謝罪するとともに、予算を所管する国土交通省に減額を働きかけたことを否定。シャトルバスについても違法性を否定している。
高市氏は8日の衆院代表質問で、簗氏に「とにかく働いて仕事で返せと言っている」と答弁し、一度は続投させる考えを表明した。ただ、その後の言いぶりには迷いもうかがえる。13日の衆院予算委員会では、簗氏の発言を「本当にダサい」と指摘。「仮に違法性のあるようなことがあれば、その時に私はちゅうちょはしない」と更迭の可能性に言及する一方、「いまは全体像が見えない。本人も違法性は明確に否定している」とも述べ、説明責任を果たさせる考えを重ねて示した。
政権発足以降、高市氏は閣僚を一人も任期途中で更迭していない。改造前の内閣で閣僚のスキャンダルが報じられた際も、「仕事でしっかりと返してほしい」などとして続投させた。ある政府関係者は「高市氏は一度決めたことを守りたいとの思いが強い。それが閣僚を更迭しない判断にもつながってきた」と解説する。
<法案審議で野党の協力にハードル>
しかし、政府与党内からは、今回は事情が違うとの指摘が出ている。予算カット発言は、行政の公平性という民主主義の根幹に関わる。シャトルバス問題も、どの候補者も注意を払う公職選挙法の基本的な規定に関わる問題だ。自民内にも「誰も簗氏を擁護できない」(政務三役経験者)との声がある。
高市氏にとってさらに大きな懸念になり得るのが、消費減税法案の参院審議への影響だ。簗氏は、減税によって影響を受ける農業者などへの支援を担う農水相の立場にある。参院では与党が過半数を割っており、法案成立の見通しはまだ立っていない。
立憲民主党など参院の野党6党は、簗氏に対する問責決議案の提出を検討することで一致。衆参の予算委での答弁を見極めて判断する方針だ。決議に法的拘束力はないが、野党が結束すれば可決される公算が大きく、政権が消費減税法案への協力を取り付けるハードルは一段と高くなりかねない。参院自民のベテランですら「問責に党議拘束はかけられないはずだ」と造反の可能性をにおわせる。
国民民主党の玉木雄一郎代表は13日の記者会見で、高市氏の「仕事で返せ」という発言を念頭に、簗氏が「仕事が十分できない環境に自ら陥っている」と指摘。大臣の職責を果たすには国民が納得する説明が欠かせないとしたうえで、「(説明が)できないのであれば、潔く(進退を)判断するときが近づいている」と述べた。
<専門家は政権へのダメージ指摘>
もっとも、政府内には簗氏の更迭を疑問視する声もある。前出とは別の政府関係者は、予算委で野党の追及が始まったいまの段階で更迭すれば「野党の手柄」となり、かえって野党の結束が深まる可能性があると話す。「更迭するならもっと前に判断するべきだった。いまからでは後手だ」とも述べ、内閣支持率が下がらない限りは続投させる選択肢もあり得るとの考えを語った。
簗氏の処遇と高市氏の判断を専門家はどうみているのか。
自民党政務調査会の元幹部職員で政治評論家の田村重信氏は、高市氏が簗氏との面会に動いた背景には、過半数を割る参院の事情が大きく影響したとみる。「野党は簗氏を辞任に追い込むためなら、国会審議のボイコットも世論の多くから支持されると判断しているようだ」と話し、こうした野党の動きが高市氏の念頭にあると分析した。
野党が結束して問責決議案を提出すれば可決される可能性が高いとし、「簗氏が辞任せずに時間が過ぎれば過ぎるほど、高市首相や自民党の支持率低下につながり、消費減税法案などにも影響する」と話した。一方、「これから辞任させたとしても遅きに失したと言わざるを得ない」と指摘。「危機管理対応の遅れが批判されることになり、いずれにしても高市政権にとってのダメージは大きいはずだ」と語った。
(鬼原民幸、竹本能文 編集:橋本浩)