<話題の小説『それか、死ぬかだった』にAI使用疑惑が。筆者も出版社も否定するが、証明するのは難しい>
フランスでは毎年8月下旬〜10月は小説の新刊シーズンで、大量の小説が出版される。今年は461点の新作が発売された。言うまでもなく、全部読むのは不可能だ。マスコミなどに紹介されるのはその一部で、大部分があまり読まれずに終わることになる。
そんな状況の中で、今年特に話題になった小説が『それか、死ぬかだった(Cʼétait ça ou mourir)』だ。著者はハイチ出身でカナダ・ケベック在住のテリソン・オレリアン。ハイチから国外に逃れ、どこへ行っても差別の標的になる主人公がその苦しい経験を語るものだ。
非常に高い評価を受けて、既に複数の賞を受賞もしくはノミネートされており、20カ国以上で翻訳出版される予定もある。オレリアンはフランスに滞在し書店でサイン会をしたり、テレビやラジオに出演したり講演会に出たりしていたが、ある日、「ほぼ100%生成AIで書かれた小説だ」という告発がX(旧ツイッター)の匿名アカウントから出た。それは突然の空爆のようなショックを人々に与えた。
本人および出版社は完全に否定しているが、証明するのは難しい。しかも世論は本人の言うことよりも、生成AIの確認に使われたソフトウエア「パングラム」を信じがちだ。マスコミもパングラムで同書のさまざまな文章を検証したり、パングラムの信頼性や信憑性について専門家に聞いたりして、その結果、『それか、死ぬかだった』は「生成AIで書かれた可能性が高い」と判断されてしまった。
事実がどうなのか私は全く分からないが、オレリアンが全て自分で書いていた場合、そうした疑惑をかけられるのは相当つらい状況だろう。