ふたを開けてみれば、何の驚きもない選挙結果だった。9月18〜20日のロシア下院選が終わり、政権与党「統一ロシア」が圧倒的多数を維持することになった。
その得票率は58%に迫り、2021年の前回と同じように、残る議席の大半も野党とは名ばかりの「体制内野党」が占める。重要議題で必ず政権に賛同する勢力であり、投票用紙に選択肢があるような錯覚を与えるだけの存在だ。
ともあれ選挙戦中に、今年ならではの支配層の考え方や国民の空気感が見えてきた。
まず、ロシア政府はウクライナでの「特別軍事作戦」が順調で、大都市の中間層の暮らしには影響しないという作り話をやめたようだ。ウクライナのドローン攻撃で石油産業が被害を受け、日々のガソリン不足が生じていることを、ウラジーミル・プーチン大統領が自ら認めた。
それでもプーチンは今回の議会選挙を、戦争への支持を国民に問う信任投票と位置付けた。投票期間の直前、戦地の兵士たちを応援するためこぞって投票するように、と有権者に促している。
有権者は大統領に言われなくても戦争を意識した。というのも、ウクライナ侵攻に参加した元軍人200人近くが立候補したからだ。その中には将校として激戦地マリウポリの包囲戦や、民間人が虐殺されたブチャで重要な役割を果たした人物も含まれる。
だがたとえ政界上層部から、戦争がらみで愛国心をかき立てるような台本を渡されても、全ての候補者がそれに従うとは限らない。選挙戦中には、予定された出席者全員の姿がそろわないテレビ討論会もあった。出席しても当たり障りのない発言に終始し、持ち時間が余って黙る姿もあった。
一方、自由公正な選挙の実現を目指す欧州のNGO「ロシア選挙モニター」によれば、投票箱が不正に操作される事例が複数あった。警官が立ち会う場所で票のすり替えが行われたと報告されている。
今回はオンライン投票の機会が拡大された。インターネットへの関心が薄いことで知られるプーチン自身もオンライン投票をした。
だが多くの一般市民は、投票結果を操作されるのではないかと疑いの目を向ける。オンライン投票において与党票が圧倒的に多かったことを思うと、約59%という近年最高の投票率を達成するために、何らかの操作が行われたという可能性は否めない。
このように国家に管理された選挙で、有権者が投票を通じて不平不満を伝えることは難しい。唯一の選択肢とみえた反戦を掲げる改革派政党ヤブロコは、最高裁によって8月に下院選から除外され、比例代表の名簿登録を取り消された。とはいえ小選挙区に候補を擁立して善戦している。
3日間の投票期間中、74カ所の選挙管理委員会の施設に対して破壊行為があった。なかでもウクライナのロシア支配地域で多く被害が生じた事実は、抵抗の継続を示す。
選挙結果はプーチンの望みどおりだったかもしれない。だが選挙戦を通じて浮き彫りにされたのは、破滅的な戦争を続けようとする政治指導層と、人的犠牲を強いられる一般市民との間に、亀裂が広がっているという現実だった。
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Jennifer Mathers, Senior Lecturer in International Politics, Aberystwyth University
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
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