トランプ米大統領は9月7日、アメリカだけでなくカナダやキューバ、グリーンランド、メキシコなど広大な地域を星条旗柄で塗りつぶした地図をSNSに投稿した。
そのメッセージは明白だ──力こそが正義となり、地政学的パワーが共通のルールを踏みにじる今日の世界では、領土修正主義が再び現実の選択肢になっている。
かつて領土保全の守護者を自負していたアメリカは、今や現状打破を図る勢力となり、「国境は不可侵」という戦後秩序の大原則を突き崩している。
トランプがとりわけ執着しているのが、NATO加盟国デンマークの自治領グリーンランドだ。アメリカがここを手に入れなければ中国かロシアに奪われると(根拠もなく)主張し、軍事侵攻の可能性までちらつかせている。さらにはカナダ併合まで口にする。
領土をめぐる脅しは、言語道断といえる資源の略奪にも道を開いた。ベネズエラに軍を派遣してマドゥロ大統領を拘束した後、トランプはアメリカがこの国を「運営する」と繰り返し述べ、51番目の州にする案まで持ち出した。
アメリカがベネズエラの統治を任せたのがマドゥロ政権の副大統領だったロドリゲス暫定大統領だ。彼女は今、国内の確認埋蔵量650億バレル超の石油をアメリカの管理下に置く合意を受け入れている。
ほかの国々も、こうした動きを見逃してはいない。トランプの盟友であるアルゼンチンのミレイ大統領は最近、フォークランド諸島をめぐるイギリスとの領有権争いを再燃させた。モロッコ沿岸にあるスペイン領セウタでも国境危機が起きている。
セウタと近隣のメリリャは何世紀も前からスペイン領だが、モロッコは両地域の領有権を主張している。それでもこれまでは、おおむね現状を受け入れてきた。アメリカが現状を守らせてきたことも理由の1つだ。