Simon Lewis Trevor Hunnicutt David Brunnstrom
[ワシントン 24日 ロイター] - トランプ米大統領は24日、中国の習近平国家主席をホワイトハウスに迎えた。華やかな国賓訪問の一環として行われた首脳会談では、貿易や人工知能(AI)、さらには激しさを増す両国の戦略的競争が主要な議題となった。
今回の会談の主なポイントをまとめた。
◎貿易休戦延長は2カ月
ベセント米財務長官によると、両国は会談で11月に期限を迎える予定だった貿易上の「休戦」を延長することで合意した。ただ延長期間はわずか2カ月にとどまった。
ベセント氏は、この延長によって両国は「経済面で何ができるのかを検討するための時間をさらに確保できる」と説明したが、長期的かつ安定した合意を固めたわけではない。関税、中国による米国製品の購入、レアアース(希土類)の供給、技術関連の規制といった中心的な問題は、次回の交渉へと先送りされた形だ。
ベセント氏は23日、中国が以前の合意で約束した2500万トンの大豆購入については義務を果たしている一方、その他の農産物を170億ドル購入するという約束については遅れが生じていると述べた。複数の米政府高官の話では、レアアースの供給についても合意した水準に達していない。こうした状況は、両国間に依然として大きな隔たりが残っていることを示している。
企業にとっては、これまで何度も経験してきた不安定な状況が続くことになる。当面、関税率は低い水準に抑えられるものの、企業は引き続き目まぐるしく変化する政策環境を前提に経営判断を下さなければならない。
新たな期限は来年1月10日。年内に深センとマイアミで2つの多国間首脳会議が予定されている。このためトランプ氏と習氏には、より恒久的な合意に向けて協議を深める機会がさらにあるとみられる。
◎台湾問題で「慎重な対応」要求
習氏は予想されていた通り、台湾問題を取り上げた。中国国営通信の新華社によると、習氏は「米国が台湾問題を慎重に扱い、中米間の戦略的協力と両国関係の発展に向けた強固な基盤を築くことを望む」とトランプ氏に伝えた。また新華社の英語版は、習氏が米国に「台湾独立に反対する」ことを望んだとも報じた。
これは台湾独立を「支持しない」としてきた米国の長年の表現から一歩踏み込んだ要求となる。現時点でトランプ政権が従来の表現を変更する兆候はない。
ホワイトハウスからは、このやり取りについて直ちに公式な説明はなかった。ただ米政府当局者はこれまで、台湾独立に明確に「反対する」との立場を表明することを避けてきた。もし米政府が表現を変更すれば、台湾を防衛する米国の意思に対する疑念が生じるとともに、米議会から強い反発を招く可能性がある。
米国は台湾にとって最も重要な国際的支援国で、米国法に基づき、台湾が自らを防衛するために必要な手段を提供することになっている。もっともトランプ氏は5月に習氏と首脳会談を行った後、最大140億ドル相当の台湾向け武器供与計画を「交渉の切り札」と表現し、米国の対台湾関与を巡って疑問が生じた。
◎戦略的リスク
習氏はトランプ氏との会談で、改めて「トゥキディデスの罠」に言及した。これは、台頭する大国と既存の大国との競争は戦争へと向かいやすいとする学術的な理論だ。習氏はそうした危険は「克服できる」と述べたものの、この言葉をあえて持ち出したこと自体が、世界2大国である米中の軍事衝突に対する懸念が、依然として両国関係に暗い影を落としていることを浮き彫りにした。
習氏は、協力すれば米中双方が利益を得られる半面、対立すれば双方が損失を被ると主張。軍同士の定期的な対話を行うとともに、危機を未然に防ぐための仕組みを強化するよう呼びかけた。これに対してトランプ氏は、両国が共有する歴史を引き合いに出し、協力の可能性を強調するとともに、共通の利益を追求すれば両国は多くのことを成し遂げられると述べ、第2次世界大戦で日本を相手に共闘した歴史にも触れた。
◎AI巡る見解の相違
両首脳はAIについて異なる見解を示した。
トランプ氏はAIについて、交流サイト(SNS)への投稿で「今のままの状態で置いておきたい」と述べ、新たな規制を課すのではなく米司法省に対応を委ねる考えを示した。中国も同じ立場だと主張した。
一方、習氏は24日、AIを主導する国として米中両国はその発展を管理する必要があると指摘。「われわれには、AIを良い方向に発展させ、管理する能力と責任があり、AIの発展が常に人間の制御下にあり、人々の福祉に資するものとなるようにしなければならない」と述べた。
24日夜にホワイトハウスで開催される晩餐会には、アルファベットのスンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)、オープンAIのサム・アルトマンCEO、エヌビディアのジェンスン・フアンCEOといったAI業界の大物が出席する見通し。
◎演出に注力
トランプ氏にとって、今回の習氏によるホワイトハウス訪問は、自らの構想に沿って姿を変えつつある首都ワシントンを披露する絶好の機会でもあった。習氏は北京でトランプ氏を迎えた際、明代の寺院や、通常は外国人に公開されていない塀に囲まれた庭園を案内したが、今回はトランプ氏がまったく異なる形の華やかな演出でその歓待に応えた。
かつらをかぶり、三角帽子を着用した兵士たちが隊列を組んで行進し、音楽を演奏。舞台となったローズガーデンは、トランプ氏のゴルフクラブを思わせるようなデザインに改装されていた。
23日と24日に行われた式典では、戦闘機や爆撃機が轟音を響かせながら上空を飛行した。あまりの音の大きさに、トランプ氏が思わず身をすくめる場面もあった。
トランプ氏は習氏の訪問を前に、ワシントンを美化し、改装するためには、裁判所や米議会から反対を受けたとしても、自らにより大きな権限が必要だと数カ月にわたって訴えてきた。だが、新しいホワイトハウスの宴会場や人工池など、多くの計画はいまだ完成していないか、問題に直面している。
ホワイトハウスの記者団が両首脳の取材に呼ばれた際も、国家の命運に関わる重要な政策について2人が語る場面を取材するためではなかった。代わりに記者団が目にしたのは、両首脳が大統領専用ヘリコプター「マリーン・ワン」を見学し、最近改修されたホワイトハウスのサウスローンを歩いて回る姿だった。そこには、大統領紋章が大きく描かれたヘリポートも設けられていた。
記者から両首脳の政策協議について質問されたトランプ氏は、それを軽くかわした後で習氏について「彼は上質な御影石が大好きなんだ」と語った。
首脳会談に関しては一言だけ「素晴らしい会談だった」と付け加えた。