長期戦の司令官となるT細胞
Th7Rは、細胞の複製や数を長期間維持するための特別な遺伝子(TCF7やIL-7レセプター)を持っている。つまり、長期間にわたってキラーT細胞(癌細胞を直接攻撃する兵隊)に指令を出し続けることができる、「長期持続型の司令官」とも言える存在だ。
では、乳酸菌が産生する成分を摂取すると、なぜ肺癌治療に良い影響を与え得るのだろうか。その鍵を握るのが、Th7Rが持つ「CCR6」というアンテナ(受容体)だ。
「CCR6は例えるなら『においをかぐ鼻』です。小腸にある免疫の基地『パイエル板』は、CCR6を持つ細胞を引き寄せる『におい』を出しています。全身を巡っているTh7Rは、このにおいに誘われて腸のパイエル板に立ち寄ります。ここでR-1 EPSを摂取していると、パイエル板の免疫細胞が活性化しており、やって来たTh7Rが『ブースト(再活性化)』されるのです」と、各務教授は説明する。「Th7Rは、癌組織に引き寄せられる『CXCR3』という別のアンテナも持っています。腸でブーストされたTh7Rが血液に乗って癌組織へと移動し、そこで強力な抗腫瘍効果を発揮する──これが考え得るメカニズムです」
共同研究グループでは肺癌患者を対象に、ICI治療と並行してR-1 EPSを強化配合したヨーグルトを摂取してもらう観察研究を実施した。その血液データと臨床経過を解析したところ、驚くべき結果が得られた。
通常、ICI治療を長期間続けると、体内のTh7Rという「財産」は徐々に食いつぶされて減っていく。これが免疫の「息切れ」の原因となる。しかし、R-1 EPS配合ヨーグルトを摂取した患者群では血液中のTh7Rが高い水準で保持されていた。治療の短期指標である「客観的奏効率(癌が一定以上縮小した患者の割合)」も、従来の標準的な治療データと比較して高い傾向にあることが確認された。