約10年前、肺癌治療の世界にパラダイムシフトが起きた。免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の登場だ。自身の免疫力を引き出して癌と闘うこの画期的な治療法は、多くの患者に希望をもたらしている。
「それまでの進行期肺癌治療は抗癌剤が基本で、長期生存は非常に厳しい状況でした。しかしICIが登場し、一部の患者では劇的な効果が表れ、5年、10年と長期生存が可能になったのです。まるで治ったかのようにコントロールできるケースが出てきたことは、私たち臨床医にとっても驚きでした」。そう話すのは、埼玉医科大学国際医療センター呼吸器内科の各務博(かがむひろし)教授だ。
しかし、ICIには臨床上の大きな課題が存在する。「ものすごく効く人が2〜3割いる一方で、全く効かない人も約3割います。残りの約5割の人は、最初は効くものの途中で免疫が『息切れ』してしまい、再び癌が大きくなってしまうのです」
同じ薬を使っているのに、なぜこれほどの差が出るのか。各務教授は、患者自身の「免疫状態」に違いがあると考えた。「効かない人」や「途中で息切れする人」を、継続して「効く人」に変えるためのターゲットとなる免疫細胞を見つけ出す──それが長年の研究テーマとなった。
やがて各務教授は、ICI治療で高い効果を得た患者の血液中に、特定のヘルパーT細胞(CD4-T細胞)が多く存在することを発見した。この細胞が多い患者ほど、生存率などの治療成績が圧倒的に良かった。
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