Kentaro Okasaka Yuka Obayashi

[東京 18日 ロイター] - 出光興産の酒井則明社長は18日、ペルシャ湾のホルムズ海峡に加え、紅海のバベルマンデブ海峡の通航が困難になる中で、スエズ経由の迂回ルートでサウジアラビア産原油の輸送を開始したことを明らかにした。酒井氏はロイターとのインタビューで、「コストの問題はあるものの、日本としては中東産原油の調達を最優先に考えるべきだ」と強調した。

従来は通常20日程度で日本に到着していたが、新たなルートでは50━60日かかるという。中東情勢が緊迫する中での原油調達について、酒井氏は、時間やコストが増加することを横に置けば「必要なものをきちんと調達できるという確信は持っている。調達面で大きな支障が出ることはない」と語った。出光は代替ルートの詳細を明らかにしていないが、調達先のサウジアラムコは7月以降、サウジアラビアのヤンブー港から紅海を北上し、地中海を通ってアフリカ南部・喜望峰を経由するルートでの供給を増やしている。

今年2月に中東情勢が悪化して以降、出光はホルムズ海峡を経由しないサウジ西側のヤンブー港から紅海経由で原油を調達してきた。しかし、ここにきてイエメンの親イラン武装組織フ‌ーシ派が船舶への攻撃を強めており、バベルマンデブ海峡を通過するサウジ産原油タンカーの運航が難しくなっている。

代替調達先として北米産原油の活用も進めるが、酒井氏は中東依存を大きく引き下げる考えには否定的だ。日本の製油所は中東産原油の処理に適した設備となっており、性状が異なる米国産原油の輸入を大幅に増やせば、精製設備の改修投資が必要になると指摘。「余計な投資になり、日本全体にとってマイナスだ」と語った。また、「日本は歴史的に見ても中東との信頼関係は揺るぎない」と述べ、UAE(アラブ首長国連邦)やサウジ、クウェートはいずれも日本を非常に大切な供給先と位置付ける姿勢は変わっていないとの認識を示した。

酒井氏は「昔は中国からもインドネシアからも、いろいろなところから買っていたが、それぞれの国が発展し、外に出す余力がなくなり結局、輸出余力のある中東、ということになった。(日本からの)距離や、日本がほしかった性状など、総合的に中東原油が一番良かった」と話した。仮に中東から原油供給の安定化に向けた支援要請などがあった場合「エネルギー安全保障を考えれば、要請に日本としてどう応えていくか、官民一緒になって考えないといけない」と述べた。

出光は中東との結び付きが深い。1953年には、自社タンカー「日章丸」をイランへ派遣し、欧米石油メジャーの圧力を受けながらも原油を直接輸入した歴史を持つ。

インタビューの中で酒井氏は成長投資にも言及した。3月に発表した米投資会社EIG傘下の英LNG事業会社ミッドオーシャン・エナジーへの5億ドルの出資について、「(LNGは)当社の事業ポートフォリオに欠けていた重要なピースだ」と語った。「配当を受け取るだけの純投資では意味がない」と述べ、日本国内を中心にLNGの販売事業に参入する方針を示した。需要次第では海外販売や輸送事業への展開も視野に入れる。

さらにトヨタ自動車と共同で進める全固体電池向け固体電解質の事業化について、自動車メーカー以外からも引き合いがあると説明。「ドローンやヒューマノイドのようなロボットがどんどん進んでおり、電池の機能をもっと高度にしないと技術開発競争に勝てない。安全性も必要になるため、これからは固体(電池)の方にどんどん置き換わっていくだろう」と見通した。

5月に発表した5年間の中期経営計画に織り込んでいないものの「車以外の用途でリチウム固体電解質が事業化、マネタイズできればいいとは思っている」とし、中国に劣後しないよう「取り組む段階からしっかり考えていかないといけない。1社単独でやれることはかなり小さく、やはりいろいろな関係企業とパートナーシップを組み政府のサポートももらいながら取り組んでいくということだ」と語った。

(岡坂健太郎、大林優香 編集:久保信博)

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