Lisandra Paraguassu Victoria Pacheco

[サンベルナルドドカンポ(ブラジル) 16日 ロイター] - ブラジルのルラ大統領は16日、サンパウロ郊外の工業地帯に位置するサンベルナルドドカンポのスタジアムで演説し、今年10月の大統領選での再選へ向けた選挙運動を本格的に開始した。

かつて工業都市として栄えたサンベルナルドドカンポのスタジアムは、ルラ氏が1979年に拡声設備もない中でテーブルの上に立ち、約6万人のストライキ中の金属労働者を前に演説した場所だ。

ルラ氏はこのスタジアムを演説会場として再び選ぶことで、同氏を工場労働者からブラジル初の労働者階級出身の大統領へと押し上げた労働運動に敬意を表した。

ルラ氏は約2万人の支持者を前に「私は、この国の働く男女に感謝する。彼らはかつて、自分たちと同じような人物こそが、自分たちとは異なる人物よりも自分たちのために多くのことができると信じていた」と述べた。支持者の多くは、ルラ氏の出身母体である左派の労働者党(PT)のシンボルカラーである赤色の服を身につけていた。

しかし約50年を経た現在、ルラ氏は、かつてPTの支持基盤だった労働組合や工場との結びつきが薄い、デジタルアプリを介して働くギグワーカーの新世代をどのように結集させるかという課題に直面している。

10月の大統領選を前に、PTは労働時間の短縮を掲げるとともに、アプリを利用して働く労働者向けの新たな支援措置を提案することで、この課題への対応を試みている。支援措置に盛り込まれたのは報酬、労働条件、社会保障給付、さらにはプラットフォームのアルゴリズムに関する規制などだ。

しかし企業側の抵抗によって、これまでの取り組みの多くは頓挫している。また、主に若い男性で構成される数百万人のアプリ労働者は政府介入に懐疑的で、ルラ氏にとって主要な右派ライバルであるフラビオ・ボルソナロ上院議員は、そうした有権者層の取り込みを狙っている。同上院議員は、ジャイル・ボルソナロ前大統領の長男。

ルラ氏が抱えるジレンマの中心には、ブラジルの正規雇用制度から外れて働く人々の急増がある。正規雇用は本来、労働者に幅広い労働権や社会保障給付を提供する制度だ。

正規雇用に就いている労働者の割合は、2010年末の46.7%から25年12月には38.2%に低下した。一方で失業率は25年末に過去最低の5.1%となった。

ルラ氏は支持者に「雇用に投資しないなら、どのような未来を望むのか」と問いかけ、雇用への投資の必要性を訴えた上で「われわれは過去3年半で1010万人分の正規雇用を創出した。それこそが未来を考えるということだ」と語った。

だがカンピーナス大学の世論研究者オズワルド・アマラル氏によれば、デジタルプラットフォームが提供する機会と政府介入への懸念が、多くの労働者を規制緩和を支持する右派政治家へと向かわせている。

アマラル氏は「広がっている認識として、国家は邪魔をし、税金を取るだけだと思われている」と話した。

23年にウーバーとブラジルの提携企業アイフードが実施した調査では、プラットフォーム労働者の40%が右派を支持すると回答した。中道派の支持率は40%、左派の支持率は20%にとどまった。

一方、フラビオ・ボルソナロ氏は16日、ブラジル国旗の黄色と緑色を身にまとった支持者たちが集まるリオデジャネイロのコパカバーナ海岸で大統領選へ向けた選挙運動を開始した。

ボルソナロ氏は自分が当選した場合に「私の最初の会社」というプログラムを創設すると表明したが、詳細は明らかにしなかった。

さらに同氏は、技術革新を促進するため大学と民間企業の提携を推進するとともに「若者たちが壁に飾るだけの卒業証書ではなく、実際の仕事も手に入れられるようにしたい」と述べた。

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