今回の結果によれば、アルツハイマー病の遺伝的リスクが低いことは、認知症や認知機能低下を防ぐ一因にはなっても、晩年にずば抜けた記憶力を維持できる理由の説明にはならない。
「アルツハイマー病のリスクに関わる遺伝子と、卓越した記憶力に関わる要因は、同じものではない可能性がある」とアンガーライダーは指摘する。
論文の共同筆頭著者でHAARCセンターの生物統計部門を率いるアナ・カプアーノは、今回の知見が脳の健康をより広い視野で捉えるきっかけになると話す。
「認知機能を維持するには、単にアルツハイマー病のリスクを抑えるだけでは不十分であることが裏付けられた」とカプアーノは言う。「卓越した認知機能を保ったまま歳を重ねる生物学的、行動的、社会的要因を理解することは、最終的には従来の疾患中心のアプローチを補完し、生涯にわたる脳の健康を支えるための、より個別化された戦略の策定に役立つだろう」
アンガーライダーによると、これまでの研究でもスーパーエイジャーは脳の構造や神経細胞、異常なタウタンパク質の量に違いがあることがわかっている。さらに、遺伝的リスクがある場合でも、学歴や運動習慣、知的な刺激、人とのつながりといった生活習慣が重要な役割を果たしている可能性がある。
ただしアンガーライダーは、今回の研究は遺伝子研究としては規模が比較的小さく、単一時点での調査にとどまっている点に注意が必要だと指摘する。また、生活習慣や日頃の行動、血管の健康状態などは考慮されていないため、微小な遺伝的影響が見逃されている可能性もある。
「現行の遺伝的リスクスコアは、誰がスーパーエイジャーになるかを予測するものではない。あくまで発症リスクを見積もるために作られたものだからだ。遺伝は全体像の一部にすぎず、おそらく最大の決め手でもない」とアンガーライダーは述べる。
研究チームは今後、認知機能テストに加え、脳画像診断、血液バイオマーカー、遺伝的特徴、免疫プロファイル、睡眠データの追跡、社会的な指標などを総合的に分析し、晩年の記憶力を守る鍵の解明を進める方針だ。
今回の成果は、記憶力の低下は必ずしも避けられないものではなく、80代以降も驚くほど若々しい記憶力を維持できる人がいるという、希望を与えるメッセージを裏付けるものだと研究チームは述べている。
Reference
Piras, I. S., Capuano, W. A., et al. (2026). SuperAging is not the inverse of common-variant Alzheimer’s risk: evidence across genetic ancestries. Alzheimer's Research & Therapy. https://doi.org/10.1186/s13195-026-02124-2.
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