Tamiyuki Kihara
[東京 12日 ロイター] - 本格的な夏休みシーズンを迎え、永田町や霞が関にも普段より閑散とした空気が漂う。そんな中、にわかに語られ始めているのが、内閣改造と自民党役員人事の時期や布陣だ。複数の関係者によると、人事の時期は9月中旬以降が有力視される。高市早苗首相の財政政策に市場が目を光らせる中、不可解な人事は誤ったメッセージにもなりかねない。高市氏にとって政権の命運を握る秋が近づいている。
<消費減税の「大綱」を優先>
「9月初旬は間に合わない。15日あたりがいいのではないか」。首相官邸では最近、幹部間でこんな会話が交わされた。取り沙汰されたのは、高市氏が注力する給付付き税額控除と消費減税の制度設計を示す「大綱」の閣議決定日だ。
事情を知る関係者によると、官邸内では当初、9月初旬に「大綱」を閣議決定し、その後に内閣改造と党役員人事を実施する案が浮上していた。臨時国会の日程に余裕を持たせるためにも、早期の閣議決定を目指していたわけだ。ただ、超党派で開かれた「社会保障国民会議」の実務者協議が難航。政府は8月5日に減税方針の閣議決定に漕ぎつけたものの、詳細を示す「大綱」については地方に対しても丁寧に説明する必要があり、スケジュールは想定よりずれ込む見通しだという。同関係者は「大綱」の閣議決定は9月15日が有力な候補日だとし、人事はその後になると述べた。
加えて、最大震度7を観測した熊本地震への対応も、政府にとって日程調整上の大きな要因となっている。同関係者は「地震対応の真っ最中に大臣の就任式や引き継ぎに時間を取られるわけにはいかない」とも説明。高市氏は9日、訪問先の長崎市での記者会見で人事について問われ、「現在は熊本地震について被災者の状況やニーズに応じて、できることは全てやるという姿勢で、まさに内閣、政府全体の総力を挙げて取り組みを進めているところだ。内閣改造や役員人事について現時点で私から申し上げることはない」と述べた。
<骨格は維持されるとの声>
注目されるのは、改造後の内閣の布陣だ。政府与党の間では「骨格は維持されるのでは」との声が大勢を占める。官房長官や財務相、経済産業相など主要閣僚の交代はないとの見方だ。特に高市氏を最も近くで支えてきた木原稔官房長官については、「いまや高市氏と直接やり取りができる数少ない存在だ。代えようにも代われる人がいない」(官邸関係者)との声もある。
片山さつき財務相や赤沢亮正経済産業相も続投を有力視する声が多い。片山氏は日米協調介入をはじめとする為替政策などで、赤沢氏は巨額の対米投融資や中東情勢の悪化に伴う原油不足への対応などで舵取りを担ってきた。高市氏との関係も比較的良好とされ、経済官庁幹部は「両大臣ともに『はまり役』だ。変える理由はないだろう」と語った。
党役員人事については、鈴木俊一幹事長と小林鷹之政調会長の去就が注目される。鈴木氏は歴史的な大勝を遂げた2月の衆院選を取り仕切った「実績」がある。鈴木氏が麻生太郎副総裁の派閥に所属することを考えても、続投との見方は根強い。小林氏はそつのない仕事ぶりに定評がある一方、ある自民関係者は「経験を積ませる意味でも、高市氏は入閣させるのでは」と交代の可能性に言及した。
<「負のサプライズ」への備え>
とはいえ、時期も布陣も最終的には高市氏の判断になる。高市氏が今年1月にサプライズ解散に踏み切ったことなどを念頭に、「首相が『やる』と言えばそのタイミングで急きょ人事をする可能性もある」と話す政府関係者もいる。布陣についても「いま流れている情報は全て憶測だ。続投も交代も、この段階で首相本人から聞いた閣僚なんて誰もいないだろう」と、同関係者は語った。
であれば、危惧されるのは「負のサプライズ」だ。例えば続投の見方が大勢を占める片山氏が交代となれば、後任の人選によっては市場に大きなメッセージを与えかねない。前出とは別の経済官庁幹部は、現在の内閣について「十分に機能している」と前置きした上で、「逆に言えば交代させるだけで憶測を呼ぶ。新しい大臣が失言でもして市場が荒れたら目も当てられない」と案じた。
秋に召集される臨時国会では、消費減税法案や衆院定数削減法案の審議を控えている。年末にかけては来年度予算編成、安全保障関連3文書の改定など、市場の耳目を集める政治日程も相次ぐ。人事を軟着陸させられなければ、政権の安定にもひびが入りかねない。別の政府関係者は「高市氏は自身に従順かどうかに重きを置いて人事をする傾向にある」とした上で、「市場はサプライズに備えておいた方がいいかもしれない」と語った。
(鬼原民幸 編集:橋本浩)