当たり前の話だが、住宅ローンは借金

当たり前の話だが、住宅ローンは借金だ。利益ではないのだから課税されず、返済が費用になるわけもない。もし返済金が経費なら、借りて返すだけで税金が消える錬金術が成立してしまう。そんなことができるなら、私だってとっくの昔にそうしている。

しかし、「いえ、住宅ローンの元本返済金は経費にはなりません」と説明しても通じず、それどころか男性は「何をニヤニヤしてんだ! 人をバカにしやがって!」と大きな声をあげる。

  口角を少しあげてやわらかく返したつもりだったが、男性は自説を否定されたうえに嘲笑されたと受け取ったのだ。

「いえ、バカにしているつもりはございません。申し訳ありません」

 そう言って頭を下げるが、男性はさらにトーンを上げる。

「おまえら、税金で食ってるんだろう。納税者に対して、そんな態度でいいと思っているのかよ!」(23ページより)

この後は、署内でも有名な「火消し役」の上司が場を納めてくれたようだ。そういう役割の人が活躍していること自体が、円滑なコミュニケーションの困難さを実感させもする(考えすぎか)。

ちなみに話は前後するが、税務大学校(という施設があるらしい)で研修を終えた後、「徴収部門」などで実績を積んだ著者はやがてT税務署法人課税部門への異動を命じられる。

企業の申告内容を精査し、適正な課税が行われているかを確認する仕事だ。徴収という「出口」の仕事から、課税という「入口」の最前線へと移ったわけである。

国税局の花形で、複雑な帳簿を読み解くエリートたちが集まる部署。いかにも大変そうだが、そんななかにも味わい深いエピソードはある。例えばあるとき著者は、先輩が断った“ある調査”を代わりに行うことを命じられる。

「ピンサロ店だ。客として店に行ってひと通りやったら支払って出る。それだけでいい」(112ページより)

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