Kentaro Okasaka Maki Shiraki

[東京 7日 ロイター] - 今週ピークを迎えた日本企業の決算は、日米政府による協調介入もあって経営陣から円安を巡る発言が相次いだ。円安は海外事業の比重が大きい企業の業績を押し上げる一方、原材料価格の上昇や値上げによる国内消費の低迷、人件費負担の増加など、副作用が企業経営に広く負の影響を及ぼすようになってきた。日米を取り巻く経済状況の差異から企業の相場感にも変化がみられ、「適正」とされた1ドル=120円台への回帰を想定しない見方も広がりつつある。

<さらなる業績上振れも>

「まだまだ上方修正の余地は大いにある」。三菱電機の藤本健一郎最高財務責任者(CFO)は6日、ロイターのインタビューで語った。7月末、4─6月​期の⁠為替が想定より円⁠安で​推移​したことなどを織り込み、2027年3月​期の連結業績‌予想を上​方修正したが、前提レートの1ドル=150円は日米介入後の水準より依然円高で、収益がさらに上振れる可能性に触れた。

トヨタ自動車は4日、前提レートを円安方向に見直し、27年3月期の連結業績予想を上方修​正した。三井物産は、第1・四半期として4年ぶりに最高益を更新。田中誠CFOは4日の決算説明会で「海外事業からの利益が大宗(大部分)を占めているので会計上は円安の方が数字としては大きくなる」と説明した。

<「プラス・マイナスの両面」>

しかし、各社とももろ手を挙げて円安を歓迎しているわけではない。日本企業は原材料や部材の多くを海外に依存しており、中東情勢を受けたエネルギー価格上昇に過度な円安がコスト増加に拍車をかけている。さらに家計の負担増による消費低迷は国内市場にも影響する。

日本貿易振興機構(ジェトロ)の石黒憲彦理事長は7月下旬の記者会見で、「円安は輸出においては非常に有利に働く部分もあるが、日本企業の場合、原材料はほとんど輸入。ある一定の為替水準でないと逆にコストを圧迫するので、円安だからといって輸出型企業が常に有利だということは決して言えない」と指摘した。

トヨタグループの主要部品メーカーのデンソーは、今年度の連結純利益を前年比13.9%減の3820億円と予想した。部材費の高騰や今後の成長に向けた人的・開発投資、中東情‌勢の影響などが利益を圧迫する。シャープは従来予想の420億円から250億円に下方修正した。期初に想定困難とした樹脂と燃料の価格上昇の影響を織り込んだ。

今回の決算シーズンで目立ったのは、「円安で業績が良くなった」と説明する企業より、「円安のメリットだけを見ていない」と強調する企業の多さだった。吉野家ホールディングスはロイターの取材に、輸入食材のコスト上昇要因になる一方で海外事業にはプラス効果があるとして、為替の影響について「プラス・マイナスの両面がある」とコメントした。三菱電機の藤本CFOは、日本経済全体の問題が少なからず自社にも影響してくるため「円安イコールオッケーというわけでは必ずしもない」と述べた。

カゴメは包材関連費用などの上昇や、商品の値上げによる国内販売の鈍化を受け、今年度の連結純利益予想を134億円から105億円に引き下げた。

<ボラティリティーに身構える企業>

企業がより強く警戒しているのは、円安そのものよりも急激な相場変動だ。7月28日の日米協調介入を受け、円相場は1ドル=164円近辺から150円台後半へ急速に円高が進んだ。収益計画や投資判断への影響を考えると、多くの企業は為替水準よりも安定性を重視している。

伊藤忠商事の中宏之CFOは「為替が大きく変動するより、安定的に推移する方が事業を展開する上では望ましい」と指摘。トヨタの東崇徳・経理本部長も「為替は安定的に推移することが非常にありがたい」と語った。

マツダの藤本哲也・経営役員は、164円近辺まで進んだ円安について「輸出の多い当社としてはメリットを享受した」としながらも、足元では介入による変動が大きくなっていると指摘。「できることをしっかり考えておかないといけない」と語った。

<企業マインドも円安側に>

企業の意識変化は、想定する「適正水準」にも表れている。日本経済の実力に見合う円相場については、大規模金融緩和を主導した黒田東彦前日銀総裁が最近、1ドル=120─130円程度との見方を示した。しかし企業の間では、その水準への回帰を前提としない声が増えている。

三菱商事の嶋津吉​裕CFOは、米国経済が底堅く物価が上昇傾向にある​反面、日本は政府が積極財​政を⁠志向していることから、「基本的にはドル高・円安基調が続くと予想している」⁠と述​べた。三井物産の田中誠CFOは150─160円近辺で推移するシナリオを想定していると説明。三菱電機の藤本CFOは「日本のファンダメンタルズや貿易収支を考えると、以前のような120円、130円という頭はもうないのではないか」と語った。

ジェトロが3月に公表した企業への年次アンケート調査では、望ましい為替レートは1ドル120-124円が全体の18.8%と最多だった一方、135円以上を選択する企業の割合が前年より増加。特に145ー149円は前年から1.8ポイント増と増加幅が最大だった。望ましい為替レートが円安方向へ推移し、企業は長期化する円安に対応しようとしているとジェトロは分析する。

(岡坂健太郎、白木真紀 編集:久保信博)

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