私はこれまで、「この会社は絶対に伸びる」と信じて資金を一点に集中させ、急落局面で売り時を逃して元本を大きく削ってしまった個人投資家を、数え切れないほど見てきました。大化けを夢見た一点集中は、裏を返せば大やけどと隣り合わせなのです。集中投資の怖さは、上昇の楽しさに紛れて近づいてきます。ここを冷静に見抜けるかどうかが、最初の分かれ道になります。
三つの分散で、リスクを「面」で受け止める
では、どうすればよいのか。個人投資家が自分の手で実行できる守り方は、大きく三つあります。
第一に、時間の分散です。一度にすべてを投じないこと。同じ金額でも、買うタイミングを複数に分ければ、高値づかみの打撃は和らぎます。相場の天井と底を当てられる人はいません。当てられないことを前提に設計するのが、時間分散の考え方です。
第二に、国際の分散です。日本の家計は、資産の大半を円建てで、国内に置いてきました。しかし一国の景気や政策、為替の局面は、必ず循環します。資産の置き場所を複数の国・通貨にまたがらせておくことは、特定の国の事情に自分の生活を丸ごと預けない、という意味を持ちます。
第三に、業種の分散です。ここで多くの方が誤解しているのが、「AI半導体はひとかたまりの値動きをする」という思い込みです。実際には、製造装置を手掛ける企業、シリコンウエハーや基板などの素材を供給する企業、メモリを担う企業、データセンターや電力インフラを支える企業と、その内訳は多彩です。収益の源泉が異なれば、株価が反応するタイミングもずれてきます。装置株が先行し、後から素材株やメモリ株へ資金が回る「循環物色」も頻繁に起こります。分野全体は強くても、その中で主役は次々と入れ替わっていくのです。
そしてもう一点。分散とは「等しく分けること」ではありません。私はあえて配分に強弱をつけることをおすすめしています。自分が最も納得できる対象に多めの資金を、値動きの読みにくいものは控えめに。分散とは、リスクを見極めて配分を設計する行為にほかならないのです。