この春、アンソロピックは 一世一代のマーケティン グ上の大成功を収めた。
米国防総省は、同社のAIモデル が持つ全機能へのアクセスを要求。そこには、人間が介在しないまま人 間を殺害することを自動化する権限も含まれていた。アンソロピックはこの要請を拒否。するとピート・ヘグセス国防長官は同社を国家安全保障上の「サプライチェーンのリスク」に指定し、政府契約から排除しようとした。しかし、連邦地裁がその発効を差し止めた。
アンソロピックは、この一件によって大いに評価を高めた。同社が業界最高の技術と、業界で最もまともな理念を持っていると、国防総省が図らずもお墨付きを与えた形になったためだ。
アンソロピックは抜け目ないヘグセスとの対決に勝っただけでなく、世間の評価も急上昇していた。それを支えたのは、生成AI「クロード」の爆発的な人気だ。
アメリカンフットボールの北米王者を決めるスーパーボウルのテレビ中継で、アンソロピックが流したCMも話題になった。内容は、チャットGPTの広告導入を揶揄するものだった。折しもSNSでは、チャットGPTがユーザーを肯定しすぎていると皮肉る投稿が広がっていた(「あなたはトラックで子供をひいたのではありません。道路の安全について教えてあげたのです。実に誠実です」といった具合だ)。
それに対してクロードを取り上げたショート動画では、「生活のあらゆる面を任せている」「これでもう会計士要らず」などと、インフルエンサーたちが絶賛していた。
次のページ