日本も他人事ではない

こうして気候変動は、分断の土壌を広げ、陰謀論の材料を供給するという二つの入り口から、認知戦の効き目を高めていく。熱波はその中心にある。物理的な災害であると同時に、情報操作の増幅装置として働く。しかも、この関係は一方向ではない。

情報操作が脱炭素政策への支持を削げば、対策は遅れ、温暖化と熱波はいっそう悪化する。熱波が認知戦を利し、認知戦が熱波への対処を妨げるという循環さえ生まれうる。

これは欧州だけの話ではない。日本もまた記録的な暑さのなかにある。

2024年の熱中症による死者は6月から9月で2,033人にのぼり、過去最多となった(厚生労働省の人口動態統計)。日本気象協会によれば、熱中症で救急搬送された人も5月から9月で9万7,578人と、2008年の調査開始以降で最も多く、福岡県太宰府市では最高気温35度以上の猛暑日が62日と、国内の歴代最多を更新した。

高齢化が進む日本の社会は、欧州と同じく高温に弱い層を多く抱える。陰謀論の側も例外ではない。日本では災害のたびに「人工地震」やHAARPによる「気象兵器」を持ち出す主張が拡散する。分断の土壌と、陰謀論の材料。日本も、その両方を備えつつある。

熱波への適応策を、防災や健康の問題としてだけ扱うのでは足りない。気温の上昇が社会の分断と不信をも押し広げる以上、認知戦への防御を固める取り組みと一体で進める必要がある。脅威の実際の姿を捉え直すことが、その出発点になる。

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