今年は建築家アントニオ・ガウディの没後100年だ。命日の6月10日には、スペイン北東部バルセロナにある代表作の1つ、サグラダ・ファミリア教会の「イエスの塔」の完成記念式典が行われた。
全体の完成は数年後になる見込みのサグラダ・ファミリアは、並外れた美を体現している。とはいえ、驚異的な形態の背後にある数学的な原理を探ると、その美しさはさらに深淵な意味を帯びる。そこから見えてくるのは新たな形の機能性や均衡、一貫性だ。「サグラダ・ファミリアの数学」を徹底的に研究したのが、数学者の故クラウディ・アルシナだ。現在のサグラダ・ファミリア主任建築家、ジョルディ・ファウリの博士論文を指導した人物でもある。
「サグラダ・ファミリアには、建築の計量的関係の指針となるモジュールや寸法体系が存在するのかと、多くの人が関心を寄せてきた」と、アルシナは回想録で記している。
「ある土曜日の午後、この謎めいた体系(それが実在するなら)に関するあらゆるデータや資料をそろえ、自宅で机に向かっていた私は発見した。7.5メートルを基準とするモジュールと12の約数の比(1対4、1対3、1対2、3対4、2対3、1)によって多くのことが説明できそうだ、と」
12という数字が顕著な役割を果たしているのは、驚くべきことではない。
ガウディは、建築と宗教的シンボルの統合体としてサグラダ・ファミリアを構想した。ヤコブの12人の息子、イスラエルの12部族、12使徒、「ヨハネの黙示録」に出てくる12の星の冠をかぶった女--聖書には12が頻出する。
だが、象徴的に重要なだけではない。12は約数が多く、比の構成にとりわけ都合がいい。アルシナの研究を手引きに、サグラダ・ファミリアを数学的に探訪してみよう。
基本となる尺度は、12という数字と7.5メートルのモジュールだ。教会内部は奥行き90メートル(7.5×12)で、幅60メートル(7.5×8)。5列ある身廊の全幅は45メートル(7.5×6)に設定されている。
天井高は、最も高い後陣部分が75メートル(7.5×10)で、身廊と直角に交わる翼廊が60メートル(7.5×8)。中央身廊は45メートル(7.5×6)、側廊は30メートル(7.5×4)、聖歌隊席が15メートル(7.5×2)だ。
この教会で最も高いのは中央にある主塔「イエスの塔」だ。172.5メートル(7.5×23)に達し、バルセロナの名所ムンジュイックの丘の標高に迫る。4本腕の立体的な十字架を冠した同塔を囲む福音書記者4人の塔は、高さ135メートル(7.5×18)だ。
その横にある「聖母マリアの塔」は高さ138メートルで、教会で2番目に高い。最上部の巨大な星形の飾りは直径7.5メートル。正12面体に12個の5角錐を取り付けた構造で12個の頂点を持つ。日中は自然光を反射し、夜間にはライトアップで輝くさまは極めて美しい。
サグラダ・ファミリアでは多面体構造も目立つ。玄関口である「栄光のファサード」の4つの塔(未完成)は頂部が正12面体、「生誕のファサード」の4つの塔は切頂8面体、「受難のファサード」の4つの塔は切頂立方体だ。
これら12の塔のうち、福音書記者にささげた塔の最上部は正20面体で、「イエスの塔」の十字架を照らし出す投光器が組み込まれている。星形多面体も各所に配置され、特に「生誕のファサード」で多用されている。
構造上のカギとして随所で用いられているのが、ガウディの代名詞ともいえる「カテナリーアーチ」だ。カテナリー曲線(懸垂線)を上下逆にした形のアーチで、力を効率よく地面に伝えるため、支持壁を必要としない。
教会内部には、丸みのある星形多角形の基部を持つ4種類の柱がある。二重らせんを描くねじれ構造が特徴的で、樹木のように枝分かれして効率的に天井を支えている。
天井には双曲面の窓を設けている。直線で構成される双曲面はつくるのが容易で、光を最大限に取り入れ、内部に投射する効果がある。
サグラダ・ファミリアには、深い象徴性を秘めた意匠がほかにも施されている。例えば、中央祭壇の上の天蓋は正7角形で、聖霊の7つのたまものを象徴している。
「受難のファサード」には、4×4列の魔法陣がある。計16コマに配置された数字は縦・横・斜めのどの列の合計も「33」になる。33はイエス・キリストが十字架の上で亡くなった年齢で、キリスト教で自己犠牲や無償の愛を象徴する。この魔法陣は、デューラーが1514年に制作した銅版画『メランコリアI』に着想を得ているようだ。
サグラダ・ファミリアを支える数学は、この教会をさらに美しいものにする。圧倒的な建築の背後に潜む数字の原理をより深く理解すれば、不滅の天才ガウディに、いっそう感嘆せずにいられない。
Sergi Muria Maldonado, Professor de Didàctica de les Matemàtiques, Universitat de Barcelona; Anton Aubanell Pou, Professor de l'Institut de Formació Continuada i professor jubilat de Didàctica de les Matemàtiques, Universitat de Barcelona, and Jordi Font González, Professor de Didàctica de les Matemàtiques, Universitat de Barcelona
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