国家主体は、それを新たに作る手間をかけず、増幅し、自らの目的に沿わせて用いる。近年の気候偽情報は、気候変動そのものの否定から、気候対策や科学への攻撃へと重心を移している。

デジタルヘイト対策センター(CCDH)が2024年1月に公表した分析によれば、動画共有サービスのユーチューブ上の気候否定主張のうち、「対策は無効だ」「科学や運動は信用できない」といった新しい型の否定が70%を占め、2018年の35%から倍増した。

逆に、温暖化は起きていないとする古い型の否定は、2018年の65%から2023年の30%へ減った。攻撃の的が「気候の事実」から「気候政策と、それを支える信頼」へ移ったことを示している。

CCDHは、こうした否定の主張を載せた動画が動画共有サービスにもたらす広告収入を、年間で最大1,340万ドルと見積もっている。偽情報は、放置されるだけでなく、収益を生む構造のなかで広がっている。

気候変動をめぐる否定論は「温暖化否定」から「対策否定」へ

この転換は、国家による情報操作の狙いと重なる。北大西洋条約機構(NATO)の情報環境評価(2022年5月から2024年5月)は、交流サイトやウェブ報道において、ロシアがエネルギー転換をめぐる敵対的な主張の「主たる推進者」だと結論づけた。

EUのファクトチェック団体EUディスインフォラボは、ロシア発の情報操作「ドッペルゲンガー」が、対ロシア制裁がドイツに停電と産業の崩壊をもたらすとする偽情報を、独メディアを模した偽サイトで拡散したと報告している。

米司法省が2024年に訴追した別の事案では、ロシア国営放送RTが米国の動画制作会社に秘密裏に約1,000万ドルを渡していた。この網が広めた気候偽情報は2,350万回以上視聴されたと、気候偽情報に対抗する団体連合CAADは分析している。

気候変動そのものは否定せず、脱炭素政策と社会の結束を狙い撃つ。熱波が現実の不安を生むほど、この攻撃は人々に刺さりやすくなる。

日本も他人事ではない
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