今年2月、アメリカとイスラエルがイランに仕掛けた戦争は、歴代の中でも突出して異質なトランプ政権だからこそ始まったと解釈することは間違いではない。でも俯瞰して見れば、ベトナム戦争やグレナダ侵攻なども含めて、アメリカは大義なき戦争と過ちを繰り返している。
特に、大量破壊兵器の証拠は見つからないとCIAや国連査察団から報告を受けながらブッシュ政権が武力侵攻したイラク戦争は、結果として約4500人の米兵と数十万人のイラク人の命を奪った。この攻撃を強く主導したのが、政権内ネオコン(新保守主義)を仕切る最強の副大統領といわれたチェイニーだ。
基本的にネタバレはすべきでない。でもこの映画の最大の見どころはラストだ。チェイニーがカメラ目線で観客に「私は謝らない」と言ってから、「選挙で選ばれて、国民に頼まれたことを実行した」と胸を張る。
そしてエンドクレジットの途中で、いきなりフォーカスグループ(試写会後の観客座談会)の場面が挿入され、『バイス』を観終わった人々が議論する様子が映る。
保守は「リベラルに偏っている」と怒り、リベラルは「事実を理解できたらリベラルってことか?」と反論し、両者は罵り合って取っ組み合うが、その横で若者2人が『ワイルド・スピード』の次回作の話に興じている。
まさしく今のアメリカの分断そのものだ。
次のページ