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100年以上も前、第1次大戦に勝利した連合国(イギリスやフランスなど)は、もちろん敵将(当時のドイツ皇帝ウィルヘルム2世)の首を取りたかった。しかし手遅れだった。既に莫大な財宝を積んだ59両の貨車を従えてオランダに逃げ込み、オランダはその身柄の引き渡しを拒んでいた。皇帝は1941年まで生き、死ぬまでナチス・ドイツを礼賛していたという。

そんな失態は繰り返したくないから、第2次大戦後の戦勝国は「裁き」にこだわった。そして46年、ドイツ・ニュルンベルクにおける国際軍事法廷で、ナチスの指導者19人に有罪を宣告した。今でこそホロコースト(ナチスによるユダヤ人の大量殺害)との関連で語られることが多いが、少なくとも当時の戦勝国から見れば、あの裁判は先に戦争を仕掛けた国を罰するチャンスだった。

国家には戦争を行う権利があるとする、何世紀にもわたる戦争権からの決別。それがニュルンベルク裁判の意味であると、アメリカの法学者ローレンス・ダグラスは新著『犯罪国家──戦争、残虐行為と国際正義の夢(The Criminal State: War, Atrocity, and the Dream of International Justice)』(未邦訳)で論じている。「平和に対する罪」、すなわち侵略戦争という行為そのものが史上初めて裁かれたのだと。

しかしダグラスの見るところ、ニュルンベルク以後の国際社会は、侵略の訴追という概念から急速に後退していった。代わりに台頭したのが「残虐性のパラダイム」で、ジェノサイド(集団虐殺)など人道に対する罪や捕虜虐待などの戦争犯罪が厳しく問われることになった。

そうした裁判は被害者の経験を公に認定し、加害者のみならず一般の人々を教育する上でも不可欠だったが、たいていの場合、侵略戦争そのものの犯罪性にまでは踏み込まなかった(残虐犯罪は往々にして、そうした戦争から生まれるのだが)。

The Criminal State: War, Atrocity, and the Dream of International Justice, Lawrence Douglas, Princeton University Press, April 2026
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「正しい戦争」とは何か