警察の対応に極めて大きな欠陥があったことは明らかだ。ノワクはいずれにしろ助からない状態だったとみられているが、最期の瞬間に手を差し伸べられるどころか、不正行為を疑われ、拘束されたというのはあまりにつらい。

警官たちが懲戒処分を受けるかを決定し、何が間違っていたのかを明らかにするのは、独立調査にかかっている。一見した限り、悪い結果になりそうだ。

この事件には、米ミネアポリスでのジョージ・フロイド殺害事件を思わせる部分もあるが(「息ができない」という言葉など)、明らかな違いがある。これは警察による殺害ではない。そして、イギリス警察がDEIやウォーク文化に支配され、そのせいでマジョリティーの白人が不利益を受けているという点で、フロイド事件とは「真逆」に位置しているのだ。

僕はBLM(黒人の命は大事)運動、特にイギリスにおけるこの運動に厳しい見方をしてきた。薄弱な論理に基づく過剰な主張と、人種差別撤廃という見せかけの目標の背後に隠れた極端すぎる要求のせいだ。

かといって、サウサンプトンでの警察の対応は反人種差別に狂っているせいであり、社会の価値観の全面的見直しが必要だということを示している、というのもあまりに単純化された物語だ。

おそらく警察が、あらゆる人種的攻撃の訴えを真剣に扱うようにと厳しく指示されていることも一因だっただろう。だが、ほかの事情もあった可能性が高い。間違いを起こしやすいという人間の性質や、一般人には理解しにくい警察特有の経験などが、より大きく関係しているのかもしれない。

1つには、逮捕される人間が、時に自分がけがをしていると嘘を言うことが挙げられる。彼らはやけくそで、あるいは同情を引くために嘘をつく。警察はまた、薬物を使ったり酒に酔っていたりする人が、あらゆる種類の嘘を口にする場面にも数多く遭遇している。

今回の事件は、一見あり得なそうだが、映像で見る限り、「警察がちゃんと見ようとすれば」血がそこら中に流れている、という状況ではなかった。夜だったし、被害者は暗い色の服を着ており、目立った血痕や血だまりはなかった(検死官は、出血の多くは内出血だったと報告している。)

だから、状況を把握できなかった警官が、想像を絶するほどの愚か者だったというわけではないし、ノワクの言葉を疑ったのは徹底して冷酷だったから、というわけでもない。

警察が正しく現場を把握するとは限らない

僕は何度か犯罪事件を目撃したことがあり、警察がまず最初に、何が起きているのかを把握するのに苦労する様子をじかに見たことがある。

ある時僕は、路上で1人の男が別の男を武器で襲う計画的な犯行を目にした。警察は見事なほど素早く到着して暴行を止めたが、僕が警官に状況を説明していると、その警官が僕のことを被害者だと思っているらしいことに気付いた(実際の被害者は20メートル離れた場所で、見るからに頭部外傷を負いながら、別の警官と話していた)。

僕が戸惑ったことに、警察は結局その事件を(無差別の)強盗未遂とした。僕は、加害者が飛び出してきて「おい、俺を覚えているだろうな」と叫び、その直後に攻撃を始めたのだと2回も説明したにもかかわらずだ(僕は刑事ではないものの、強盗だったら「財布を出せ。さもないとこれで殴る」と言って、相手に賢明な選択をする20秒を与える可能性のほうが高いだろうと僕は考える)。

おそらくは、(僕が震えて動揺していたので)警察は僕を信頼できる「第三者の」目撃者とは見なさず、当事者の男2人がでっち上げた話を受け入れたのだろう。彼らは(薬物が絡んでいたから)自分たちの敵対関係を知られたくないという事情があったのだ。

腑に落ちない点も
【関連記事】