冤罪はどの国でも起き得るが、大事なのはどれくらい早く冤罪被害者を救済するかだ。しかし現行法も、法務省が推進する法改正もその重要な点に応じない。
もう1点の大きな問題は、検察が集めた全ての証拠を裁判で開示するのが義務化されていないこと。証拠には個人情報などが含まれるので、開示の際にプライバシー侵害の懸念があると検察は言う。
ひどい答弁だと思う。閲覧制限を設ければ問題ないし、しかも検察や法務省の側はプライバシーを守らないことが多い。例えば誰かを逮捕する際、記者やカメラマンを事前に呼ぶ。そのときは推定無罪の原則を無視し、プライバシーも全く気にしない。
証拠開示が不十分なのは再審だけでなく、一審の段階も同じだ。日本の刑事訴訟法の欠点として海外でも批判されているが、法務省は改善しようとしない。むしろ後退する恐れがある。再審法改正案では、証拠を再審の手続きや準備以外の目的で、第三者に提示するのを禁じることを提案している。
再審が実現した冤罪事件では、被害者の支援者が弁護団と組んで証拠を分析し、おかしいと思う点を公表した。マスコミも開示された証拠について取材した結果、検察の説明とは違う事実が判明した。
そうした活動や報道が不可能になってしまう。報道の自由の侵害につながる改正法案だ。
自分とは関係ない、国会議員が決めればいいと思ったら駄目だ。いつ冤罪事件に巻き込まれるか分からない以上、全ての国民がそうした市民活動や報道の制限に反対すべきだ。
私を含めた海外記者も現行の再審制度や改正法案の問題点を指摘し、大きく報道すべきだと思う。改善が見えない場合、人権や報道の自由を守る国際機関も議論に加わることが必要になるかもしれない。本当に人ごとではないのだから。
西村カリン
KARYN NISHIMURA
1970年フランス生まれ。パリ第8大学で学び、ラジオ局などを経て1997年に来日。現在はラジオ・フランスおよびリベラシオン紙の特派員として活動している。新著は『日本「完璧」な国の裏側』。Twitter:@karyn_nishi
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