Raju Gopalakrishnan Greg Torode

[シンガポール 31日 ロイター] - 急速な軍事拡大を続ける中国と、長年この地域を主導してきた米国の関与が低下するのではないかという不安――。その板挟みとなったインド太平洋諸国は各国独自、また相互の防衛力強化を急いでいる。

ヘグセス米国防長官は30日、シンガポールで開催されたアジア安全保障会議(シャングリラ会合)で、地域のパートナー諸国に対し、安全保障の負担をより多く担うよう促した。

一方イランでの戦争との絡みで、米国がインド太平洋への関与を優先する姿勢が揺らいでいるのではないかという根強い懸念に直面しながらも「われわれは2つのこと(中東の軍事作戦とインド太平洋への関与)を同時に実行できる」と言い切った。

これに対して日本の小泉進次郎防衛相は、米国の関与は揺るぎないと信じていると述べた一方で、一部の国が依然としてその決意を過小評価している可能性があるとも認めた。

こうした中でシャングリラ会合に出席した地域の国防相や軍高官らは、ロイターの取材に対して、伝統的な「米国の傘」を超えて、互いにより多くの協力を行う動きが加速していることを明らかにした。

フィリピンのテオドロ国防相はロイターに「ここに集まったすべての国防相は、それぞれの防衛能力を機敏かつ迅速に拡大させる必要性について、意見が一致している」と語った。

テオドロ氏はこれを、米国の伝統的な役割を「補強する」と表現し、フィリピン政府が日本、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドなどのパートナーとの防衛協力関係を深めていることを挙げた。

その上で「共通の脅威が存在するため、少なくとも抑止の段階においてより多くの主体が関与することで、米国のコミットメントはより強固になる」と付け加えた。

日本は、その広範なネットワークのハブとしての地位を確立しようとしている。

小泉氏は、日本政府が中国にとどまらない、より緊密な地域協力の「結節点」として機能することを目指していると発言した。

4月に日本は数十年ぶりとなる防衛装備品輸出ルールの抜本的な見直しを行い、海外への武器売却制限を緩和して、艦艇やミサイルなどの輸出への道を開いた。

小泉氏は「日本は、装備品協力、防衛産業協力、維持整備協力を、これまで以上に積極的に進める。各国が必要な能力を持ち、必要な時に使えるようにする」と語った。

<有志連合>

シンガポールのチャン国防相は、現在の環境において「われわれは志を同じくする国々と、能力と意欲のある有志連合を形成し、柔軟なパートナーシップを発展させるべきだ」と発言した。

これによって「さまざまな溝を埋め、アイデアを試し、未知の領域での道筋を見つけることができる」という。

カナダ国防軍のカリニャン参謀総長は、同軍が地域での存在感を高めており、サイバーセキュリティーや海上演習で日本やフィリピンと協力する一方、インドネシアに対しては英語訓練の支援を行っていると明かした。

カリニャン氏はロイターに「インド太平洋地域には成すべきことが山積している。だからこそ、あらゆる面でパートナーシップが強化されているのだろう」と語った。

ニュージーランドは、より緊密な関係構築と新たな装備の導入を検討している。ペンク国防相は、老朽化したアンザック級フリゲート艦の更新に向け、日本や英国からの艦艇調達を積極的に検討していることを認めた。

ペンク氏は、シャングリラ会合の合間にシンガポール、マレーシア、オーストラリア、英国の国防相らと会食し、54年の歴史を持つ「5か国防衛取極(FPDA)」に基づく交流の拡大について計画を話し合った。

4月に就任したペンク氏は、この協定を「より高いレベル」で継続していく余地があるとの見解を示しており「既存のつながりを維持しつつ、他国と交流する新たな方法を見つけることができれば、それらを同時に進めていく」と説明した。

このように相互連携を進めているインド太平洋諸国だが、各国当局者らは、中東の紛争やトランプ大統領の「米国第一主義」政策によって、米国のインド太平洋への関与が衰えることはないと強調している。

フィリピンのテオドロ国防相は「例えばイランやその他の地域への米国の関与を理由に、われわれの信頼が揺らぐことはない」と述べた。

オーストラリアのマールズ国防相は、米国との関係を「わが国の安全保障にとって極めて根本的なもの」と改めて指摘。ロイターに「トランプ政権とオーストラリアのアルバニージー政権の双方とも、われわれ自身を、自分たちの代をはるかに超えて続く関係の担い手であると考えている」と述べた。

Reuters Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。