<人口減少、AI、地球との共存…日本の「次のかたち」について>

2015年の産業構造審議会でのプレゼンテーションが元になった話題作『シン・ニホン』と最新刊『「風の谷」という希望』に込められた新しい未来の提案について、著者の安宅和人氏に財政学が専門でアステイオン編集委員をつとめる土居丈朗・慶應義塾大学教授が聞く。『アステイオン』103号の書評対談「『シン・ニホン』から『風の谷という希望』へ」後編。

※前編:AI、データ、人材で「ボロ負け」した日本はどう再起動できるか?…安宅和人に聞く、「風の谷」という希望 から続く

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人類の二大課題──人口調整局面のしのぎ方、人類と地球との共存

土居 『シン・ニホン』で、人口減少については悲観的になる必要はないと書いておられますね。

安宅和人先生

安宅 まず前提として、人口減少は全世界的に進む長期的な人口調整局面と捉えるべきで、課題はその局面のしのぎ方だと考えています。

まず、出生率の低下は豊かさの関数です。本来は良いことの結果です。1960年代後半までに約6の合計特殊出生率を誇ったインドですら2024年は2を割り込みました。豊かになると、乳幼児死亡率は下がるので、たくさん生む必要がなくなりますし、労働力ではなくお金のかかる存在になります。

そのため、たくさんは生めない。また、義務教育期間が長くなって晩婚化が進む。男女ともにキャリア化が進み子どもをつくるのがより一層遅くなる。以上のことで全世界的に進むこの変化がほぼすべて説明できます。

2つ目に、人類1人当たりの生産性は200年かけてほぼ100倍に高まりました。100年にすると10倍です。今後、日本の場合、人口は100年で2分の1から3分の1に減少していきます。10倍対2分の1、3分の1ですから、普通の生産性向上カーブに乗ってさえいれば吸収できる範囲です。

3つ目に、今のデータ×AIがもたらすのは根本的に省人化に向かう変化です。情報処理面だけでなくすべてのロボティクスにも活用され、周囲に当たり前にロボットがいる世界になることはほぼ確実です。そういうなかで無条件に人口が増えるのは逆流行動に近い。

4つ目に、人類の最大級の課題として、「人口調整局面のしのぎ方」に並んで「地球との共存」があります。先日は北海道で気温が40度近くになった。海に囲まれていて32、3度以上には上がらないはずのシチリアで、2023年は48度まで上がり、滑走路が溶けて一時、空港閉鎖になった。

地球温暖化で抜き差しならなくなっているこの局面で、人類はまだ人口を増やして環境負荷を上げるのか。これらのことを考え合わせても「そんなつまらないことでガタガタ言うな」です。

土居 痛快ですね。

新技術がひらく世界

土居 高齢化で車の運転ができなくなり、日常生活に必要な移動手段がなくなるということで、じり貧感、悲壮感に覆われている過疎的な地域がありますね。しかし、自動運転技術が社会実装されれば、「好きなときに移動をオーダーできるのは悪くない」となるかもしれません。

他の技術や介護ロボットなどもあればなお一層便利になるわけですが、新技術活用の現実的な一例として自動運転1つでも社会は大きく変わるのではないでしょうか。

安宅 同感です。僕が今乗っているテスラは高速道路では基本的に自動運転です。1秒たりとも意識が落ちない8個の目が働いている自動運転がどんなに安心かつ素晴らしいか、一度経験すれば誰もがわかると思います。

ただ、若干脱線しますが、こんなことがありました。先日大学からの帰り道、ワイパーも効かない滝のような雨のなか、路面が池と化した東名高速道路を時速4、50キロの自動走行をしていたら、突然赤画面が出て自動走行が停止したんです。

「僕が運転する自信がなくて、おまえを一番必要としているときになんで落ちるんだよ」と泣きそうになりながら必死に運転して帰宅しました。

土居 なぜ落ちたんですか。