安宅和人先生 土居丈朗先生 本対談は2025年7月30日に都内で行われた。

残すに値する未来をつくる

安宅 「風の谷」の検討メンバーは、全体論から空間全体、道、エネルギーのような基盤インフラ、教育やヘルスケアのような社会インフラに至るまで、多数のチームに分かれて検討を続けてきました。

基本的に問題を3層で整理する必要があると思っています。①社会全体が抱えている課題、②疎空間が共通で抱えている問題、③「風の谷」をつくろうとしたら解かなければいけないもう一段深い問題、の3層です。

人口密度が極めて低いがゆえに採算が合わず、社会基盤の維持が困難かつ災害に弱い空間を都市とは異なる原理で成り立つ空間として捉え直し、その存続可能性、持続可能性の研究を続けています。そして、この研究結果は実は都市部こそ応用しやすい。つまり、「疎空間」という社会の縮図に向き合うことが、都市部と疎空間の双方にとっての改善につながるということです。

土居 確かに、「風の谷」をつくる目的で始められた探究から、日本の直近の課題解決に役立つアイデアが続々と出てきていますね。

安宅 我々も驚いています。「風の谷」の研究をやり、見えてきたことを埋め込めるほど社会が良くなる。目先の問題も良くなって、未来は明るくなります。「風の谷」づくりをやりたくなってきませんか(笑)。

土居 そうですね。今手をつければなおさら、目先の問題の解決にもつながります。本日は貴重なお話をありがとうございました。
 

安宅和人(Kazuto Ataka)
1968年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部教授。LINEヤフー株式会社シニアストラテジスト。一般社団法人 残すに値する未来 代表理事。専門は情報学、脳科学。著書に『イシューからはじめよ』『「風の谷」という希望』(いずれも英治出版)など。

土居丈朗(Takero Doi)
1970年生まれ。慶應義塾大学経済学部教授。専門は財政学、経済政策論など。著書に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社、日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞)など多数。

 

 『アステイオン』103号


 公益財団法人サントリー文化財団・アステイオン編集委員会[編]

 CEメディアハウス[刊]


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