<ナチス台頭にベトナム戦争、9.11の影響も。「教養」として知っておくべき「社会派ミュージカル10選」を一挙紹介──>

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【前編はこちら】実は「ミュージカルはポリティカル」?...社会の闇を描き出す「知っておくべき」社会派作品10選

その鏡を観客へ向けて見せた革新的な作品が、1966年初演の『キャバレー(Cabaret)』⑤だった。ナチスの台頭で自由が失われゆくドイツの首都ベルリンを、アメリカ人作家クリフの視点を通して描く同作は、ユダヤ人との結婚を望む女性を襲う暴力や、忍び寄る全体主義の恐怖を描き出す。

初演時のアメリカでは、公民権運動やベトナム反戦運動が活発だった。演出家ハロルド・プリンスは、国家規模で不正義や暴力が是認される点でアメリカが劇中のベルリンと変わらないと感じていた。

『キャバレー』 映画版で主人公と恋する歌手サリーを演じたライザ・ミネリ
⑤『キャバレー』 映画版で主人公と恋する歌手サリーを演じたライザ・ミネリ EVERETT COLLECTION/AFLO

そこで用いられたのが、鏡の演出である。劇中に挿入されるキャバレーの場面で、司会者が巨大な鏡を背に現状をからかい交じりに歌う。幕切れ、ナチス関係者で埋まった舞台上の客席が映し出された後、照明が切り変わる。目の前の鏡に映るのは『キャバレー』を見に劇場を訪れた観客たちの姿だ。

現実の不正義を許す私たちとナチスの間にどれほどの差があるのか。舞台上で描かれた差別と暴力が現実と地続きであることを突き付けるのである。

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