いよいよ参議院議員選挙が公示される。現時点でのいわゆる"改憲勢力"は85議席。今回の改選で77議席を確保できれば、すでに与党が3分の2を押さえる衆議院とあわせ、両院で総議員の3分の2以上、つまり憲法改正の発議が可能な状況となる。
民進党は参院選のポスターに「まず、2/3をとらせないこと」というキャッチフレーズを打ち出し、メディアでも、にわかにこの数字がクローズアップされ始めているが、改憲は今度どのような形で進むことが予想されるのだろうか。東京工業大学准教授の西田亮介氏に、今後予想される改憲への流れと、その先に予想される「国民投票」について話を聞いた。【大谷広太、永田正行】
――民進党のポスターの意味するところは「憲法改正の発議に必要な数字をとらせない」ということでしょう。19日にニコニコ生放送などで配信された「ネット党首討論」でも、憲法が論点として取り上げられ、首相は参院選後に憲法改正について議論していくと発言しました。
西田:自民党は結党当初から「自主憲法制定」を党是に掲げてきたものの、様々な派閥を抱えていたことから、憲法改正には着手できない状況が続いていました。しかし、安倍総裁のもとで自民党内の体制が強化され、改憲への態度をより強固なものにしてきているように見えます。
また、これまで改憲勢力が衆参両院で3分の2の議席を獲得したことはほとんどありませんでした。しかし、今回の参院選では自民・公明両党に加え、おおさか維新、日本のこころを大切にする党などで77議席が確保できれば、発議が可能になるわけですから、当然、憲法改正論議が現実味を帯びてくるわけです。
選挙戦において、自民党が「あくまでも経済政策が争点だ」と主張することに対して、野党やメディアは、「もっと前面に憲法改正を押し出して正々堂々とやるべきだ」と批判しますが、世論調査の結果を踏まえると、憲法改正を争点にしても、有権者があまり関心を持たないという状況もあるでしょう。
【参考記事】参院選の争点がハッキリしないのはなぜか
もちろん自民党としても避けている部分があるはずです。ただ、本当にやりたいことはさておき、経済政策や待機児童、給付型奨学金などの社会保障政策といった、有権者が敏感にかつ肯定的に反応しやすいものを主張の前面に押し出すというのは、ここ最近の自民党の"勝ちパターン"となっています。
――もし参院選で改憲勢力が3分の2を確保した場合、自民党が改正に着手するのは、憲法のどの部分だと思いますか?
西田:まず、憲法の根幹に関わる部分や前文については触らないと思います、日本国憲法の本質部分は変更しないという公明党との合意も困難になりますし、なにより9条などはさすがにその象徴性を国民もよく知っているはずです。日本国憲法の改正は一度失敗すると次いつ改正の条件が整うかまったく予想できません。このような認識を前提にすると、憲法改正に相当の意欲を見せてきた安倍自民党をはじめとする改憲を主張する人たちが最初に取り掛かるのは、一時トーンダウンしてはいましたが、やはり96条の内容、すなわち下記の条文だと考えられます。
第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
この変更を訴えるのではないかと思います。