【写真特集】オランダに迫る海面上昇のタイムリミット
WATERLAND
Photographs by KADIR VAN LOHUIZEN
<海水面が今より3メートル以上、上昇すると、国土の一部を放棄して大都市を移転させることが必要になる可能性も>

1953年に発生した高潮による北海大洪水は、オランダ南西部の広い地域を冠水させ1900人近い死者を出した。国土の4分の1が海面より低いこの国にとって、堤防などの治水対策は不可欠の存在だ。その後、南西部を堤防や水門などで高潮から守るデルタ計画が進行。53年のような高潮被害は理論上、1万年に1回しか起こらなくなった。
だが、その状況が変わろうとしている。気候変動により、今世紀末には海水面が1~3メートル上昇する可能性があるからだ。これまで以上の排水施設と堤防のかさ上げは不可欠だが、それでも対応が可能なのは3メートルの上昇までだという。
それ以上になれば国土の一部を放棄し、アムステルダムやロッテルダムなどの大都市の移転が必要との指摘もある。海面上昇はもはや時間の問題であり、いずれ治水対策の費用と都市移転の費用をてんびんに掛けることになる。
デルタ計画の完成には40年を要した。だが、今のオランダに残された時間はそれほど長くはないかもしれない。
1、北海の一部であるワッデン海と、かつて湾だったアイセル湖を仕切る「締切大堤防」。1932年に完成し、周辺の土地を高潮から守るとともに干拓を可能にしている。昨年からは堤防の強化計画が進む
2、約1000年前から泥炭地の上に町が造られ、水運業で栄えたゴーダ。水を含んだスポンジのような土壌は、町の建造とともに緩やかに沈下し続けている。海水面の上昇もあり、根本的な解決策は見当たらない
3、南西部ゼーラント州の村ウォルファールトスデイクで、トウモロコシやサムファイアという野菜を栽培する農家の男性。海沿いの土地は塩分濃度が高いため、栽培できる作物の種類は限定される
4、巨大な可動式の防潮堤「マースラントケリンク」の建造により、デルタ計画は完成。ロッテルダムの町と港を守る重要施設だが、海水面が上昇すればほぼ年中閉鎖されることになり、町と海は分断される
5、1953年の高潮と同じく、嵐と大潮が重なった2019年1月8日にテルスヘリング島で起きた洪水。治水対策により本土の被害は軽微だったが、対策が十分でない土地ではこうした被害が頻発するようになった