<周辺の脅威に敏感とされるイスラエルは、なぜ奇襲を防げなかったのか。軍と情報機関の「見落とし」の正体に迫る>


▼目次
1.繰り返しダウンした「ガザ監視システム」
2.不自然に作動したイスラエルSIMカード
3.「演習」と片づけられた地下トンネルの異変
4.伝わらなかった超重要情報

イスラム組織ハマスがパレスチナ自治区ガザから急襲を仕掛けたとき、イスラエル側はその予兆を全くと言っていいほどつかんでいなかった。

2023年10月7日の早朝に始まった攻撃によって、イスラエル軍が事態を掌握するまでに約1200人が死亡し、約250人が人質となった。

周辺地域の脅威に対して常に敏感なイスラエルが、なぜ不意打ちに遭ったのか。この疑問を検証する本が出版された。

エルサレム・ポスト紙の元編集長ヤーコブ・カッツと軍事ジャーナリストのアミール・ボフボトの共著『イスラエルが眠っている間に(While Israel Slept)』だ。

急襲前夜のイスラエルの軍や情報機関の動きをあぶり出し、ハマスの攻撃を未然に防ぐことができた可能性を探った部分を、同書から抜粋で紹介する。

1.繰り返しダウンした「ガザ監視システム」

ユダヤ教の「仮庵(かりいお)の祭り」を締めくくる休日を前にした23年10月6日金曜の午後、イスラエルのヘルジ・ハレビ参謀総長は上級将校らと電話会議を開き、週末に向けて情勢分析に臨んだ。

南方軍司令部とイスラエル軍情報部(通称「アマン」)のトップを務めた経験があるハレビは、大編成の軍隊も少数精鋭の特殊部隊も巧みに指揮する。情報機関との連携の重要性も心得ていた。

電話会議は、異常は見られないという見方でまとまった。

情報当局者らは通常と異なる動きを何ら報告しなかった。伝えられたのは、シナイ半島からガザへ対戦車ミサイルシステムを密輸しようとする動きがあり、それを阻止する努力が進んでいるということだけだ。

このときハレビはまだ知らなかったが、電話会議が終わる頃までに、情報収集機関8200部隊を指揮するヨシ・サリエル准将の元に情報が届いた。

ガザの活動監視システムがダウンしたという不穏なものだった。

ガザの監視システムは、どこにでもあるようなものではない(いまだにその正式名称は機密扱いされている)。

人口密度の高いガザでの異常発生を検知するために設計され、高度なアルゴリズムを駆使してあらゆる異常をキャッチする。

このシステムが直近24時間に何度もダウンしたとみられ、復旧作業が進められていた。休暇中だった担当者らには、そのために招集がかかった。

だがその間も、襲撃を検知するはずのこのシステムはダウンしたままだった。テロ対策を担う情報機関のシンベトにとっても、大きな問題だった。

シンベトはこのシステムが発出する警報を感知し、さらにはイスラエルの各機関が収集した全情報が流れる別のシステムにもアクセスできる。

2.不自然に作動したイスラエルSIMカード

システムのダウンは危険信号だった。

その一方で、イスラエル軍関係者らが休暇に入ろうとしていた午後10時、シンベトに自身のシステムの1つから不穏な警告がもたらされた。

ガザでハマスの軍事部門の幹部数十人が、携帯端末でイスラエルのSIMカードを作動させたため、通信量が急増していたのだ。

イスラエルのSIMカードを使って探知を逃れるというハマスの戦術は以前から分かっていたので、これは潜在的な脅威と見なされ、南方軍司令部に情報が伝えられた。

このとき懸念されたのは、ハマスが攻撃を準備していることだった。

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【note限定公開記事】イスラエルはなぜ「奇襲」を防げなかったのか?――「10.7ハマス襲撃」の内幕


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