<ノーベル文学賞作家ハン・ガンの『別れを告げない』英語版が、1月に出版された。アイリス・チャン『ザ・レイプ・オブ・南京』も引き合いに出しながら、米コラムニストはこう読む>

ハン・ガン(韓江)は昨年ノーベル文学賞を受賞した注目の韓国人作家だ。その最新刊『別れを告げない』の英語版が1月、ホガース社より出版された(邦訳は昨年3月に白水社から既刊)。

物語は作家のキョンハがこの世を去ろうとするところから、幕を開ける。夫とは別れたようだが娘がいることを除いて詳細は分からず、その娘も一度も登場しない。

キョンハはソウルのアパートに独り籠もって偏頭痛に耐え、水と通販のキムチで命をつないでいる。毎日手紙の形で遺書を書くが宛先を決められず、晩には破り捨てる。

ハンの描く女たちは、しばしば人間の残忍さを知ったことで打ちひしがれる。キョンハの場合は「K」と言及される町で起きた虐殺について本を書いたことが、絶望の原因らしい。

「K」とは光州市だろう。ハンは2014年の『少年が来る』で光州事件を取り上げた。1980年に軍が学生主導の民主化運動を鎮圧し、多くの市民を殺害した事件だ。

ハンの父は光州で教師をしていたが、蜂起の4カ月前に仕事を辞めてソウルに越したため、一家は難を逃れた。ハンは12歳の時に父の本棚で偶然に追悼写真集を見つけ、光州事件を知ったという。

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中国系アメリカ人ジャーナリストのアイリス・チャンを思い起こさせる