<軍人への疑問や批判を許さないのは、将来の戦争への心理的準備なのか>

中国で改革開放が始まった後の40年間、華国鋒(ホア・クオフォン)は忘れられた人物だった。華は毛沢東が指名した後継者で、毛が亡くなった直後、最高指導者として一時的に栄光を手にした。が、のちに改革派の鄧小平に実権を奪われ失脚し、2008年に北京の病院で静かに人生の幕を閉じた。

なぜか先日、その華の生誕100年記念座談会が北京で盛大に開かれ、人民日報など官製メディアが大きく報じた。習近平国家主席が華を利用して江沢民や胡錦濤などの鄧派、つまり改革開放支持の後継者を否定し、自分の権威と正統性をアピールするためではないか──という分析もある。

習は明らかに毛のまねをしている。特にその言論統制は毛に決して劣らない。例えば先日、ある中国人ネットユーザーがSNSの新浪微博で、中印国境紛争での中国人兵士の死亡人数について、冗談交じりに個人の見解を投稿した。すると、彼は初の英雄侮辱罪適用で起訴された。

ある河北省の女性は武漢の新型コロナウイルスについて、実際の死亡事例を挙げてネットに長文投稿をしただけでデマ拡散の罪で逮捕され、懲役6カ月の判決を受けた。

アメリカに留学している19歳の中国人の若者は、中印国境紛争で亡くなった中国人兵士に対する過激な発言で同じく英雄侮辱罪とされた。本人がアメリカにいて逮捕できないため、代わりに中国の実家が捜索され、両親が連日警察署で尋問された。

「文化大革命時代は反共産党や反毛沢東という反革命罪があったが、反英雄という罪は初耳だ。今の言論弾圧は文革時代よりひどいではないか」という匿名のネット投稿がある。

軍人に対して英雄としての賛美しか許さず、疑問や過激な批判を厳しく処罰するのは、軍人の士気を高めるためだろう。華を賛美することも同じで、全て習政権を強固にするための権威と正統性の自己宣伝にすぎない。

軍人を賛美するのは戦争時代だ。英雄侮辱罪は将来の戦争への心理的準備ではないか。そのうち文革時代に英雄軍人と大いにたたえられた「雷鋒(レイ・フォン)」の21世紀版が現れるかもしれない。

【ポイント】

華国鋒


1976年、周恩来の死去後に首相代行に就任。毛沢東に後継指名され、毛が死去すると文化大革命の中心だった「4人組」を逮捕したが、復権した鄧小平との闘争に敗れ80年に失脚した。

雷鋒

人民解放軍の英雄。湖南省生まれ。入隊後、配置された輸送隊で作業中に頭を強打し22歳で死亡。死後に毛沢東ら指導者の言葉を記した日記が発見され、理想的軍人に祭り上げられた。

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