たしかにスバルがこの写真を広告に使ったというのは捏造であるが、写真そのものは捏造ではない。2010年10月、エルサレム近郊の入植地に住む過激なシオニストであるイスラエル人が運転するスバルが、東エルサレムでイスラエルに抗議するパレスチナ人の子どもたちに突っ込んで、負傷させたのだ(https://youtu.be/G2unZIzIwp0 ※注意:過激な映像が流れます)。この事件についてはいろいろ報道されており、画像はそうしたものから取ったにちがいない。

もちろんスバルはこんなものを広告に使ったことを完全否定している。問題を複雑にしているのは、イスラエルにおけるスバルの地位である。イスラエルにいったことがあるかたなら、すぐ気づくだろう。イスラエルではスバル車が非常に多いのである。

これも、イスラエル・ボイコットが関係してくる。アラブ諸国からボイコットされるのを恐れた日本車メーカーはかつてイスラエルへの輸出を軒並みストップしていた。ところがスバルだけは対イスラエル輸出を継続していたため、イスラエル・ボイコットの対象となり、アラブ諸国に輸出できなくなってしまったのだ。

つまり、1980年代なかばごろまで、イスラエルで購入できる日本車はスバルだけだったのである。したがって、スバルは長く親イスラエルの象徴と見なされていた。

この「広告」がイスラエルの力を誇示したり、スバルの頑丈さを賞賛するためのものとは考えづらい。可能性として思い浮かぶのは、反セム主義者(反ユダヤ主義者)による嫌がらせである。これでイスラエル人の残虐性を示そうとしているという推測だ。

もちろん、パレスチナ側による逆宣伝(?)という可能性もあろう。イスラエルの入植者の非道ぶりを喧伝し、同時に彼らに愛されてきたスバルの評判を貶めようという魂胆だ。

パレスチナ当局は「これが本物の広告なのか、誰かがスバルのロゴを使って作ったものなのかは不明」としつつ、「おぞましい画像の使用」に対抗措置を取るようスバルに要請し、「この卑劣で不見識な画像が(インターネット上で)出回ることを止めるために必要なあらゆる措置を取り、この画像を非難するよう強く求める」という内容の文書を送ったらしいが、スバル側からいえば、そんなこといわれてもねえって感じだろう。

フェイク・ニュースが蔓延するご時世に

正当な理由があってイスラエルを批判することはどんどんやるべきだ。だが、反シオニスト的な言説が、文字どおり人種差別としての反セム主義に利用され、彼らの錦の御旗となるというのは話が別である。

上に挙げた例からもわかるとおり、この種の情報は、少し落ち着いてみれば、おかしなところにすぐ気づく類のものばかりである。しかし、なまじ単純でわかりやすいだけに、考える間もなくものすごい勢いで拡散していく。気づいたときにはすでに遅し。

フェイク・ニュースが蔓延するこのご時世、わかりやすさを売りにする報道や時事解説をよくみかける。それらがみんなフェイクだとはいわないが、「なるほど」とか「腑に落ちる」といったカタルシスの背後で、不要なものとして捨てられてしまいがちな複雑さや難しさのなかにもしかしたら真実が隠されているかもしれない点には注意しておく必要があろう。

とくに中東関連情報はね。

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