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最新ポートランド• オレゴン通信──現地が語るSDGsと多様性

山本彌生|アメリカ

2022年 新たな時代、ポートランド 4つのP『イノベーション』の飛躍

イノベーションセンターNike 車.jpg

イノベーションセンター敷地内には、楽しみながら仕事をする!そんなアイディアが、至るところに散りばめられているのも特徴。  Photo | Courtesy Nike

| 多様性、新たな表現『バイポック』

人口分布図的に、白人が多数を占めているオレゴン州とその近郊市。それを反映する形で、ナイキWHQ社内でも白人が多数を占めているのが現実です。アジア人含めマイノリティーの割合の少なさが、大きな課題。多様性の問題については、2025年までに社員の『男女の割合を50・50』にする。そんなターゲットを挙げて前進をしています。

また、役職ランクが上に上がれば上がるほど、白人の男性が多い。これも、現WHQのまぎれもない事実です。このことを踏まえて、より公平にBIPOC(バイポック =『黒人・先住民・有色人種』というマイノリティーを表現する用語)、LGBTQといった分野を含め、社内の平等化を図るための取り組みを邁進するといいます。

実は、この聞きなれないBIPOCという言葉人種差別撤廃を求める米国の動きの中で、昨年から頻繁に使われるようになってきました。

B = Black(黒人)・ I = Indigenous(先住民)・ POC = People of Color(有色人種)

近年、黒人を表す英語として、敬意を込めて『African American(アフリカ系アメリカ人)』という表現を使う傾向が強くありました。しかし同時に、「私の先祖は、アフリカ系ではない。」「黒人全てがアフリカから連れてこられたと、一絡げにしないでほしい』等といった、少し複雑な問題に発展。その様なことから、このBIPOCではBを使用する。そんな、アメリカならではの背景があります。

黒人と先住民という、米国の歴史の中で最も虐げられてきたマイノリティー人種。その二つが、BIPOCの頭文字に選ばれているのです。

ナイキWHQではこの他にも、アジア人に対する偏見*の "モデル・マイノリティー"(もの静かで、従順、上司や目上の人の指示には不平を言わない人種)という概念の変化も求められています。WHQ内で、差別をされた経験のあるアジア人、アジア系アメリカ人。そんな彼らが、アジア人以外の人々と公平に話をする機会の必要性。凝り固まった固定概念を打ち破り、互いに理解を促すなどの取り組みも既に始まっています。

*前回の、2022年に向けて!なければ作る改善する。それがポートランド・スタイルをご覧ください。〛

| 2022年からの必須スキル4つのP! イノベーションと成長

| ©2022PDXCOORDINATOR, LLC

現在のWHQは、オミクロン株の影響からリモート勤務が基本。とはいえ、コロナ禍中でも引き続き大切にしている働き方のコンセプトがあります。それは、『新しいプロセスへの順応性』と『そこに対応し続けるマインドセット』です。

これからますます発展していく、新しいツール。それを使いこなしながら、新しいコミュニケーションスタイルに対応し続ける柔軟性は必須です。コロナ前の対面式の利点と渦中からのリモートの利点。その双方をしっかりと融合させるマインドセットは、これからの時代には不可欠なスキルの一つとなっています。

『イノベーションを常に起こし、失敗を怖がらずに新しい事に挑戦し続ける。』『失敗することは当然のこと。そこを恐れずに、新しい事にスピーディにチャレンジをし続ける』。これらを奨励する文化やリーダーからのサポート。これは、長年のナイキを支える礎なのでしょう。

Nike イノベーションセンター 掲示版前.jpgPhoto | Courtesy Nike

| コロナ禍で見えてきた成長の姿勢

このような世界的リーダー企業のイノベーションを聞くと、どうしても「じゃあ、自分の組織は?」と考え、そのギャップに落ち込みがちです。

当然、日本で同じ事をする事はそう簡単ではありません。とはいえ、日本人の特性として良い点はたくさんあります。ですから、先ずはもう一度、プラス点や強みをしっかり考え書き出してみてください。

その上で方向性を見据え、リスクマネージメントやプランを立てていく。新しい事に挑戦をする仕組みを作り上げていく。そこからさらに、揺るがない新しい文化を築き上げていく。ナイキであっても、数えきれない程の紆余曲折があり、一日で築きあがった企業ではないのですから。

さらに、今注目を集めているコンセプトの一つ、『心理的安全性がイノベーションをもたらす』。この言葉を聞いたことがありますか。逆の言い方をすれば、『対人関係の不安によって、いかに社会や組織がむしばまれていくのか』ということです。これは、人々の心を守ることと同様、時間の節約と効率性に良い影響を与えてくれます。

例えば、日本の組織の特徴。それは、縦の繋がりはしっかりしている。でも、違った部署など横の繋がりは少ない。今、まさしくこんな時代だからこそ、風通しの良い組織に作り変える適切な時ではないでしょうか。

あまり大きく物事を考えすぎずに、例えば、WHQのイノベーションセンターの超縮小版を想像してみてください。違った分野との繋がり、アイディアの融合の『場』をまずは作り出す。そのことで、必然的または自然発生した多種多様なチームが機能し出し、いつしかイノベーションにつながることも現実に起こりうると想像できます。

人は弱いもの。周りの空気に敏感で、個人の心掛けだけでは、社会・組織の空気に流されずに行動することは難しい。ですから、一対一の信頼関係を作ること。そこを『はじめの一歩』として、そのような関係を増やしてみる。小さな働きかけから、大きなモノ・コトに繋がっていくのだと感じます。

いつ収束するか見えないこの時代。複雑で不安定な時ほど、行動力と判断力が必要です。そして、心理的安全性の高い組織と社会が生き残っていきます。

心理的安全性とは、「一人ひとりが、気兼ねなく意見を述べる事ができて、自分らしくいられる社会・組織」。そう、忖度文化からの脱皮です。

こんなことを言ったら、恥ずかしい思いをするのではないか。陰で色々言われるのではないか。そんな不安なしに、非難されることもない環境が求められているはずです。

組織で言えば、従業員が不安を感じることなくアイディアを出し合い、情報を共有し合える場と空気。失敗からの発見は、イノベーションへの第一歩。そう考えられる風土をつくり上げていくこと。このような環境が、2022年以降の社会と組織には不可欠なのだと、心から感じています。

この新しい時代。土をならして、種をまく時期なのかもしれません。芽が出るまでには時間が掛かります。でも、種をまかない事には芽は息吹くことはありません。今日あなたは、どんな種をまきたいですか。

次回のテーマは、2022年長引くコロナ禍の『場』としてのポートランド。市民として、ビジネスとして、そんな取り組みにフォーカスします。 2月11日掲載です!

ナイキWHQキャンパス敷地内への出入りは、常時、特別アポイントメント(オフィシャル)を取った方のみに限られています。またコロナ禍により、警備がより一層強化されています。視察見学に興味がある方は、筆者山本まで直接ご連絡を頂けますようお願い致します。

 

Profile

著者プロフィール
山本彌生

企画プロジェクト&視察コーディネーション会社PDX COORDINATOR代表。東京都出身。米国留学後、外資系証券会社等を経てNYと東京にNPOを設立。2002年に当社起業。メディア・ビジネス・行政・学術・通訳の5分野を循環させる「独自のビジネスモデル」を構築。ビジネスを超えた "持続可能な" 関係作りに重きを置いている。日系メディア上のポートランド撮影は当社制作が多く、また業務提携先は多岐にわたる。

Facebook:Yayoi O. Yamamoto

Instagram:PDX_Coordinator

協働著作『プレイス・ブランディング』(有斐閣)

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