EV大国中国の試練...販売減速と欧米規制の中で「生き残りのカギ」とは?

HERE COME THE CHINESE EVS

2024年7月16日(火)13時40分
湯進(タン・ジン、みずほ銀行ビジネスソリューション部上席主任研究員)

newsweekjp_20240711045345.jpg

フォードも中国では伸び悩み CFOTOーSIPA USAーREUTERS

政策主導から市場主導へ移行する中国のEV業界では現在、電池や駆動モーター、制御システムなどの基幹部品を低価格で量産できる体制が整い、レアアースの保有や精錬能力、自動車部品や加工設備の産業集積といった面で、日米欧を圧倒している。中国勢は自国のEVサプライチェーンの競争力を生かし、コストパフォーマンスでグローバル競争に攻勢を仕掛けている。

海外進出が生き残りのカギ

一方、アメリカはインフレ抑制法を基に中国製EVを補助金対象から外し、今年8月に関税率を現行の25%から100%に引き上げる。EUも7月から最大38.1%の追加関税を課す。中国のEVシフトを警戒する動きが欧米で広がり、部品や材料、資源の域内調達の動きや、サプライチェーンのブロック化の動きが加速している。

欧米での事業展開が厳しさを増すなか、中国企業は東南アジアのタイ、欧州のハンガリー、中南米のメキシコとブラジルを主要な進出先に選んでいる。

一時的な失速を経て、中国NEV市場の伸び自体は当面続く。今年2月に開かれたフォーラムで、中国清華大学の欧陽明高(オウヤン・ミンカオ)教授は、電池のコストダウンにより中国新車市場のNEV率が早ければ25年に50%に達すると予測した。実現すれば、中国政府が掲げた35年の目標を10年前倒しで実現することになる。

足元では世界のEV市場が踊り場を迎えているが、EVシフトは揺らぐことはないだろう。国際エネルギー機関(IEA)が今年4月に発表した報告書では、世界の新車販売のEV率が30年に5割を超えると予測されている。充電インフラの整備に伴い、EVはエンジン車と変わらないコストや品質を実現しつつ、ソフトウエアや自動運転機能などを組み込みながら進化を続けていく。

今後、海外で高性能・低コストのEVサプライチェーンを構築できれば、中国は短いスパンで新車種を投入し着々とグローバル市場で足場を固めるはずだ。これまでエンジン車を主力に据えてきた日本や欧米のメーカーはEVの競争力を確立しなければ、グローバル事業を失う可能性がある。中国市場での戦略とEVシフトの結果は、世界での日米欧メーカーの競争力も左右するだろう。

(この論考は個人の意見であり、所属組織とは関係ありません)

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシアとウクライナ、新年の攻撃に非難応酬 ヘルソン

ワールド

スイスのバー火災、約40人死亡・100人超負傷 身

ワールド

石油タンカー追跡、ロシアが米に中止を正式要請 米紙

ワールド

ロシア、ウクライナ攻撃の証拠を米に提供 プーチン氏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 2
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 3
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    日本人の「休むと迷惑」という罪悪感は、義務教育が…
  • 8
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 9
    「断食」が細胞を救う...ファスティングの最大効果と…
  • 10
    【現地発レポート】米株市場は「個人投資家の黄金時…
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中