最新記事
ウクライナ戦争

これ以上の「動員」は無理か...プーチン大統領、「現在の制圧地域で妥協」してウクライナ停戦を模索との情報

2024年5月25日(土)11時17分
ロイター
ウクライナ停戦を探るプーチン大統領

5月24日、ロシアのプーチン大統領は、2年あまりになるウクライナ侵攻について、現時点でロシアが制圧する地域を認定する形で停戦する用意がある。複数の関係筋が明らかにした。モスクワで23日、代表撮影(2024年 ロイター)

<ウクライナ側については、ゼレンスキー大統領が政権を握っている間はロシアとの合意は成立しないとの見方も>

ロシアのプーチン大統領は、2年あまりになるウクライナ侵攻について、現時点でロシアが制圧する地域を認定する形で停戦する用意がある。複数の関係筋が明らかにした。ただウクライナと西側諸国が応じない場合は戦闘を続ける方針という。

6月中旬にはウクライナ和平を目指す国際会議がスイスで開催される。スイスはロシアを招待していない。

ロシア政府上層部に近い情報筋によると、プーチン大統領は、かつてまとまりかけた停戦合意が西側の干渉で台無しになったことを苦々しく思っている。 情報筋は「プーチン氏は必要なだけ戦うこともできるが、戦争を凍結するために停戦する用意もある」と語った。

ペスコフ大統領報道官は、ロシアは目標達成のために対話に応じると繰り返し明言しており、ロシアは「永遠の戦争」を望んでいないと述べた。

先週、新国防相に経済学者のアンドレイ・ベロウソフ氏が就任。西側の軍事・政治アナリストからは、侵攻の長期化を受け、ロシア経済を戦時体制に置くための人事との指摘も出た。

しかし、情報筋によると、プーチン大統領は、現在の勢いを利用して戦争を終わらせたい意向。これまでの戦果で、国民に勝利をアピールするのに十分だと考えているという。

新たな攻勢を掛ける場合、国内で兵士をさらに集める必要が出てくるとも認識している。以前の動員で国民から強い反発が出て支持率を落としたこともあり、追加動員は望んでいないという。

プーチン大統領は、停戦合意にはいかなる戦果も組み入れる方針に変わりないが、現在の占領地域で妥協する用意がある。

「プーチン大統領は、われわれが勝利した、北大西洋条約機構(NATO)から攻撃を受けたが主権を保った、クリミアへの陸路を確保していると言うだろう」と関係者の一人は述べた。

その方針で停戦した場合、2022年9月にロシアに編入したウクライナのドネツク、ルガンスク、ザポロジェ、ヘルソンの4州のかなりの部分を保有することになるが、完全支配とはならない。

ペスコフ氏は、ロシア憲法に基づきロシアの恒久的な一部となっている4州の返還は論外と述べた。

プーチン大統領は24日、訪問先のベラルーシで行った記者会見でロイターの報道内容に関する質問に対し、和平交渉を再開すべきとの考えを示した上で、交渉は「現地の現実」と戦闘開始初期に合意された計画に基づいて行われなくてはならないと述べた。

ウクライナのクレバ外相はXへの投稿で「プーチン大統領は現時点でウクライナに対する侵攻を終わらせるつもりはない」とし、プーチン氏は側近を使って戦争停止の用意があるという「偽りのシグナル」を発し、来月のウクライナ和平会議を妨害しようとしているとの考えを示した。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、全面侵攻が始まった2022年にプーチン氏とのいかなる交渉も「不可能」と正式に宣言する法令に署名。プーチン氏の条件に基づく和平は実現できないとの考えを繰り返し表明している。

ロイターが取材した関係筋の1人は、ロシアがウクライナを迂回(うかい)して米国と合意しない限り、ゼレンスキー氏がウクライナの政権を握っている間は合意は成立しないとの見方を示した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=連日最高値、エヌビディア急伸 ハイテ

ビジネス

エヌビディア時価総額5兆ドル目前、政府向けスパコン

ワールド

ブラジル・リオで麻薬組織掃討作戦、過去最悪の64人

ビジネス

NY外為市場=円が上昇、日米当局者の発言で財政懸念
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 2
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大ショック...ネットでは「ラッキーでは?」の声
  • 3
    コレがなければ「進次郎が首相」?...高市早苗を総理に押し上げた「2つの要因」、流れを変えたカーク「参政党演説」
  • 4
    楽器演奏が「脳の健康」を保つ...高齢期の記憶力維持…
  • 5
    「ランナーズハイ」から覚めたイスラエルが直面する…
  • 6
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 7
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 8
    「何これ?...」家の天井から生えてきた「奇妙な塊」…
  • 9
    「死んだゴキブリの上に...」新居に引っ越してきた住…
  • 10
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中