最新記事

医療

心臓が飛び出たまま成長した少年ミカエル、手術経て初めて胸の中で鼓動始めた

2023年8月19日(土)19時25分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

「心転移症」の手術を受けたミカエルと母親、手術を担当した医療スタッフ
「心転移症」の手術を受けたミカエルと母親、手術を担当した医療スタッフ(写真提供・セブランス病院)

予想以上に心臓が飛び出して深刻な状態......

しかし、実際に韓国にやってきたミカエルを検査すると、さまざまな問題が出てきた。

一番の問題は体の外に出ている心臓が大きいことだった。シン·ユリム心臓血管外科教授は「予想していたよりも心臓が飛び出してお腹の方に大きく垂れ下がっている状態でした。これが深刻でした」と語った。

また、心臓カテーテル検査や脳のMRIなどを行ったところ、2つあるはずの心室がひとつしかない機能性単心室であることが判明。さらに肺に血流を送る肺動脈がなく、4つあるはずの心臓弁膜もひとつしかないので血液が逆流していた。全身と肺を循環した血液がひとつの心室へと流入し、心臓に負担がかかっている状態だった。また、両方の血液が心臓内で混ざって慢性低酸素症まで発生し、心臓はもちろん、脳やほかの臓器の機能低下まで憂慮される状況だった。

人工横隔膜で心臓のスペースを確保

手術を執刀したハン・ソクジュ、シン・ユリム両教授はまず心臓を体内に入れるためのスペースを確保する方法を探った。これまで体内になかった心臓を無理に入れようとすると肺や心臓が押しやられて負担がかかるからだ。

そのため、お腹の他中の臓器を横に押し出し、人工材料で横隔膜を使って空間を作り、心臓を挿入した。さらに、単心室内で血液が混ざらないようにするため心房中隔の手術、弁膜逆流を防ぐ弁膜成形手術も同時進行で行ったという。

全ての手術を終えてからは手術部位を人工材料だけで覆って経過を見守った。すぐに縫合してしまえば、腫れていた心臓が体内に入れたことで圧力が加わり無理がかかるかもしれないからだ。幸いにも、ミカエルは2日後には心臓の腫れもひけて縫合まで完了することができた。

これまで家の外に出ることもできなかったミカエルだったが、今は普通の子供と一緒に外で遊ぶことも可能になった。今回、ミカエルの手術が成功したことは、希少疾患患者に希望の光をもたらすものとして話題になっている。


>>【動画】心臓が飛び出た少年ミカエル


【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン大統領と外相搭乗のヘリが山中で不時着、安否不

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 5

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 6

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 7

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 8

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 9

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中