最新記事

ロシア情勢

ロシアで「国を滅ぼすような内戦」が起きる可能性...露軍元情報将校が指摘

Former Russian Commander Warns of 'Civil War' That Will 'Kill' Russia

2023年1月17日(火)17時00分
ファトマ・ハレド
イーゴリ・ギルキン

イーゴリ・ギルキン REUTERS/Maxim Shemetov

<ウクライナ侵攻が続けば「3日で終わって国を滅ぼす内戦もありうる」などと分析>

元ロシア軍情報将校のイーゴリ・ストレルコフことイーゴリ・ギルキンは先ごろ、ウクライナ侵攻が続けばロシアで「内戦」が起こり、多数の犠牲者が出る可能性があると警告を発した。ギルキンはウクライナ東部の親ロシア派部隊の司令官を務めたこともある人物だ。

「あらゆる種類の内戦が起こる可能性がある。冬の3日間でわが国を死に追いやるような内戦もあり得る。たった3日間で終わっても、わが国を死に追いやるだろう」

ギルキンはウクライナのアントン・ヘラシチェンコ内相顧問がツイッターに投稿した字幕付きの動画でこう語った。

動画の中でギルキンは、ロシア政府が「瓦解して数多くの犠牲者を伴う内戦に陥り」、ついには抜本的な体制変革が起こるかも知れないとも話した。

ロシアはウクライナでの戦争を続けているものの、装備品の入手難や人員不足、士気の低下に苦しんでいる。以前から可能性が指摘されていた、指揮官らの内部対立のようなものも起きている。

14日、ウクライナ東部の都市ドニプロ(ドニエプル)ではロシア軍が発射したミサイルが集合住宅に着弾。死者は40人に上り、数十人がけがをした。

ウクライナで大敗すれば血みどろの内戦へ

またギルキンは11日、テレグラムへの投稿で、ロシア軍は東部ドネツク州の都市ソレダルなど一部の戦線では前進しているものの、ソレダル西郊はまだウクライナ軍幹部が抑えていると述べた。ソレダルは要衝であるバフムトの北に位置する。

ロシア国内のウラジーミル・プーチン大統領に批判的な人々からは以前から、内戦の可能性を指摘する声が上がっていた。

元ロシア下院議員で人権派弁護士のマルク・フェイギンは昨年10月、本誌に対し、プーチンがウクライナで大敗すれば、さまざまな勢力や地方が権力を奪い合う「血みどろの」内戦が起きるかも知れないと語っていた。

「状況は、この戦争がどのように終わるかに大きく左右されるだろう」とフェイギンは言った。また、ウクライナ軍がヘルソン、ザポリッジャ、ルハンスク、ドネツクの各州を完全に解放できれば、ウクライナはクリミア半島を取り返すまでもなく、プーチン政権を「粉砕」できるかもしれないとも語った。

「最も簡単なのは、ロシア国内のエリートたちが決心してプーチンの後釜を選ぶことだ。西側と交渉ができて、(ウクライナでの)戦争を終わらせるための最初の枠組みを提示でき、将来の選挙に向けて働くことのできるような人物を」とフェイギンは言った。

11月に本誌が入手したロシア連邦保安局(FSB)の内部告発者からの電子メールでも、プーチンの側近たちが関与して内戦が始まる可能性について触れられていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金総書記、新誘導技術搭載の弾道ミサイル実験

ワールド

アフガン中部で銃撃、外国人ら4人死亡 3人はスペイ

ビジネス

ユーロ圏インフレ率、25年に2%目標まで低下へ=E

ビジネス

米国株式市場=ダウ終値で初の4万ドル台、利下げ観測
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中